早速始まった俺の武具製作。

 まず最初に身体中を測られた。
 身長、スリーサイズ、肩幅、腕の長さ、太股とふくらはぎの太さなど、マジで身体の隅々まで測られた。

 他にも手のひらから足のサイズまで自分でも知らなかった事まで調べられ、ここまでするのか?って所まで調べるから本当に驚いた。

 それだけ二人が本気になっているって事だから良いんだけど。
 あと炎の確保のためあっちこっち探し回っているが中々見つからず、はや二ヶ月が過ぎようとしていた。


「これでもダメか」
 これで何百回目だろう。爺さんの牙で短剣を作る作業は全くと行って良いほど進まない。
 最初は炎の温度調節から始まり、炎その物、つまり精霊や魔物の炎を変えながら手探りで進めてきたが、全くかすりもしない。

「あと試して無い炎ってあったけ?」
「いやこの辺にいる鍛治精霊や火精霊も試したが変化すら無い…」
「………遠出して炎を持って来るって手もあるが、正直それもダメならメンタルの所で挫けそうだ」
「兄上、リュウ殿。少し休憩を入れましょう」
 ドルフが茶を持って来てくれた。この工房は他のメイドさん達も入ってはいけない場所らしく、いつも茶を持って来てくれるのはドルフだ。

「ありがとドルフ。ドワルも一度休憩入れようか」
「しかし……」
「渋ってもダメだ。確認しながら休めばいいさ」
 無理矢理ドワルを連れていく。
 工房から少し離れた部屋で茶と菓子を食べて一服する。

「ドルフの方は大丈夫なのか?国の仕事をしながら服の製作もしてくれてるんだろ?」
「私はまだ少しずつ進んでいるからまだましです。問題は兄上の方です」
 茶も菓子も手をつけず頭を抱えて悩んでいるドワルを見て不安そうにしている。
 ああ、まさかここまで苦戦するとは思っても見なかった。爺さんの牙ってどんだけ頑丈何だよ……

『リュウ大丈夫?』
 あぁ、俺の癒しがやって来た!

「おいでお嬢、そして俺を癒してくれ~」
『まったくもう、あの子も居るんだからね』
 そう言った後一羽の鷲が俺の肩に止まった。

「なら二人で癒してくれ~」
 思いっきり二人を抱き締める事で癒しを求める。

「ははは、リュウは本当にその二匹が好きですね」
 渇いた感じで笑うな。

「はぁ、どの炎なら良いんだ……」
「ドワル、いい加減休め。こっちまで気が滅入る」
「すまん。だがこの問題が解決しないと先には進めんのは分かっているだろ」
「こうなりゃひたすら磨いで削るか?」
「その場合何年先になるか………」
 本当に手詰まりって感じだな。
 ……にしても炎か、一つだけ大丈夫な気がする炎がある。
 ……一か八かでやってみるか。これ以上ドワルを疲弊させる訳にもいかない。

「ドワルとドルフ、一緒に外に行かないか」
「ん?気分転換か?なら一人で」
「俺の中で一つだけ上手くいくかもしれない炎を持った奴に合う」
「何だと‼そんな相手がいるなら最初に紹介しろ‼」
「まだ未熟何だよ。だからはっきり言って賭けだ、それでもよければ付いて来てくれ」
 俺は多分だが成功する気がする。

「その相手は誰だ」
「この子だよ」
 ドワルの問いに俺の膝の上にいた鷲を抱えて教える。

「その鷲が?」
「そうだ。俺が工房に籠ってる時お嬢の組手の相手をしてる。これがどういう意味かわかるよな?」
「その鷲がフェンリルと同格の種族だと言うのですか!?」
 ドルフが驚いた。ま、普通の反応だな。

「多分な。それなら爺さんの牙を少しは変形するかも。どうだドワル、少しは希望が出てきたんじゃないか?」
「……今までその事を言わなかった理由を教えろ」
「ただ単にこの子は俺の従魔じゃ無いってのと、フェンリルクラスの大物がいると聞いたらこの子の害になるかもしれなかったからだ。従魔になるかどうかはこの子自身に決めて欲しかったってのもある」
 ちょっとは分かって欲しいが分かってくれただろうか?
 するとため息を出しながらドワルは言った。

「分かったよ。従魔ではない野生の存在をむやみに使いたくなかったってことな」
「リュウ殿は優しいのですね」
「分かってくれたならこの子に協力してもらう。いいか?」
 俺は膝の上にいる鷲に聞くと「ピイ!」と鳴いた。