「調教師にそんな力があるはずがない‼何だ『拳闘士』かそれとも『武術家』か?」
 大声出すな。他奴らにバレる。

「そう言うのは全部終わってからにしましょう。それより王様の所まで案内よろしく」
 先輩は不審そうに俺を見たが「こっちだ」と案内してくれる。

『信用できるの、そのドワーフ?』
『しなきゃ何も出来ない』
 リルは首を傾げているが何も言わず付いて来てくれる。

『ところでそっちは大丈夫だったか?』
『嫌な感じがしたから直ぐに逃げたよ。一度外に行ったからまだ外を探してるかも』
 上出来上出来、そんじゃこっちも戦闘準備に入るか。
 まずは仲間集めからだな。

「先輩。他に仲間になってくれそうな人って居ません?」
「大丈夫だ。ドルフ様に捕まえられた者達の中に私と同等の力を持つ者達を引き入れるつもりだ」
 同等ね、そんなのあんまし頼りにならないが。

「その人達の『職業』は」
「『魔術師』だ。だが高齢でな動きは鈍い。もう人はこの国の暗部にいる、捕まってはいないが今はスパイ活動中だ。後はその部下達だな」
 年寄りか、でもまぁ魔術師なら逆に年食ってる方が頼もしいか?後は暗部ってのだが?

「暗部って信用できるのか?」
「無論だ。あいつら以上に信用できる奴らはいない」
 なら良いけど。

 先輩がそっと息を潜めて指を指した。
「あそこの角にドワル様が幽閉されている独房だ」
 どれ『五感強化』で数とか調べてみるか。
 ……心臓の音は2つか、目でも確認したいがそっちはやめておくか。

『リル、敵の数は2で合ってるか?』
『合ってるよ、リュウ』
『なら二人で行くぞ。ただ殺すな、後が面倒だ』
『それはそれで難しい』
 それじゃ先輩はどうだ?

「先輩って速く動けます?」
「いや、そんなに速く無い」
 うむ、どっちも使えん。
 そういえば先輩って『騎士』じゃん。素手じゃまともに戦えないだろ。
 なら俺一人でやるか。相手も雑魚っぽいし。

「じゃ、俺一人でやってくるんで少し待ってて下さい。さっさと終わらせます」
 先輩が何か言おうとしたが無視。さっさと潰そう。

 まず『身体能力強化』で一気に近付き『五感強化』で相手と殴る所をキチンと確認、後はダメ出しの『第六感』で更に正確性を底上げする。

 後は思い切り顔面を殴るだけ。
 殴られた二人は思い切り頭をぶつけ、気絶した。

「終わったぞ、早く来い」
 呼ぶとリルは直ぐに来た。
 先輩は呼んでも来ないので俺一人でさっさと終わらせよう。
 軽く叩くとこの扉が厚いのが分かる。殴って壊すのは無理だな。

「リル、牙出して」
『切るの?』
「爺さんの牙なら簡単だろ」
『私が切っても良いよ?』
「ダーメ。リルがやったら本物の王様も一緒に切っちゃいそうで怖い」
 リルは頬を可愛く膨らませながらも牙を出してくれた。

 ありがとう、と言って頭を撫でると尻尾を振るのは変わらない。
 とりあえず扉を切り刻む。

 バラバラになった扉の奥に一人のドワーフの王がいた。
 謁見の場に居た男より少し痩せているように見えるがその眼光はあの男より鋭い。

「ドワーフ王のドワル様で合っていますか?」
「………誰だお前は」
「はじめまして、俺はリュウ。ただの調教師だ」