「大人しくしてろよ」
そう言われてブチ込まれたのは少し広い牢屋だった。

今は特に枷は掛けられていないがヤッパ不安だな。とりあえずリルが来るまでゆっくりさせて貰うか。

「新入りか、何で捕まった」
向かいの牢屋から声を掛けられた。

見るとなかなか強そうなドワーフがいた。暇だし少しだけ先輩に関わっておくか、直ぐ脱獄する予定だけど。

「王様に革を売らなかった罪」
「またそんな理由で捕まえたのか」
ため息をしながらそんな事を呟いた。

「先輩の罪は何ですか?」
「反逆さ、ただ王にそれは止めておけと忠告しただけでだ」
「随分短気な王様だな」
「ああ、大森林に行って大規模な魔物狩りをしようとしたのを止めただけのつもりだったのだがな」
だから俺の革をあんなに欲しがったのか。少しでも軍の力を強くするために、なんだかんだで俺って森の平和を守った感じがするな。

「何か目標みたいなものってあったんですか?」
「無い。ただの素材集めとして100匹は狩ると息巻いていたがな」
ヤッパ信用しなくて良かった。あのオッサン何か嫌な感じしたんだよ。

「100年も統治してるって言うからもっと凄い人だと思ってたから残念だね」
「すまんな。ドワル様に代わり謝罪する」
「いや、あんなのの代わりに謝罪されても」
「あれは偽物だ」
あんだって?

「あれは弟のドルフ様だ」
はあ!?王様の弟だぁ‼

「あれは暴君だ。ドワル様の名を語り悪政をしている」
「本物は何処だ」
「奥の特別独房だ。鉄の扉に鉄の部屋、しかも力を出せぬように呪いが掛かっている」
そりゃまた厳重な。となると爺さんが言ってたのはそっちか、なら俺のためにもそいつは脱獄させた方が良い。

「先輩、その人脱獄させたらどうなる」
「その前に脱獄出来るのか?」
「いいからいいから、もしもの話ですよもしも。そのまま王位奪還といけますかね?」
「そう簡単にはいかないがそれに近い形にはなるかも知れん」
ふむ、ヤッパそう簡単にはいかないか。面倒臭いな人間社会って……ヤベ完全に魔物の思考だ。

「とにかく俺が出来るのは脱獄とその後の護衛ぐらいかな。政治の事はよく分からん」
「……なぜそこまでする。何か目的があるのか」
「目的はあるよ、ただ今は言わないでおく」

『リュウ大丈夫?』
お、来たか。なら脱獄出来るな。

「リルお帰り。ちょっとお仕事だ」
『お仕事?』
「本物の王様を助けてやるんだ。俺を騙した偽物の王に正義の鉄拳を食らわすのさ。後リルはこっから出たら元のサイズに戻っておいて、ちょっとは驚かせたい」
『ええ、ここは狭いからやだ』
「なら偽王の前だけでいい」
『あの広い部屋なら良いよ。それよりここから出よう』
「そうだな」
とりあえずここから出るのが先か。

そう思って牢を蹴り壊す。『身体能力強化』を使えば簡単に壊せる。
「先輩の牢も壊すのでちょっと離れて下さい」
驚きながらも隅に行った、では早速壊す。

「ところで先輩の職業は?」
「『騎士』だ。お前の職業は何だ」
本気で不思議そうにしてるよ。

「『調教師』ですよ」
笑いながら言った。