明日はどうするか考えてる内に早くも次の朝。
 王様と会う約束の日だが、本当に会ってくれるのか?
 一応昨日の内に礼服って言うのか?買っておいたが、これで良いのか?

『リュウの今日の服格好いいね』
「ありがと、ただこれで良いのかよくわかんないけどな」
「じゃ私が直してあげる」
 人の姿になると俺の服を細かく直してくれる。

「どこで習ったんだよ。俺もよくわかんねぇのに?」
「お母様に習ったの。女はこういう技術も持っておくと良いよって」
 言いながら曲がったネクタイを直してくれた。本当良い女だよリルは。俺には正直勿体ない。

「本当、リルは良い女だよ」
「本当!じゃぁ結婚して‼」
「その前に住みかと金をチャンと手に入れたらな」
 むーっと可愛く怒るリルの頭を撫でてあげると尻尾を振った。ヤッパ可愛い。

「リュウ殿。居られますか」
「時間か」
 リルが合わせて人の姿を解く。
 それじゃ思っても見なかった大博打は当たるか外れるか、賭けに行こうか!


 昼になる少し前、俺は一人でイスに座っていた。
 リルは別室で待機中、王様に会うのは俺だけのようだ。

 俺が待機してるこの部屋も滅茶苦茶豪華だった。
 誰が描いたかわからないけど豪華な額縁で掛けられた絵。高そうな花瓶に入った花。フカフカのソファーとイス。庶民の俺には全く分からない値打ち物が多分イッパイある。

 ヤッパこれから会うのは王様なんだなぁと、改めて思った。
「リュウ殿お時間です」
「はい」

 さてと、とりあえず会ってから交渉は考えてみるか。
 昨日の内にマークさんから俺の持っている魔物の革の価値は聞いておいた。物によっては特別な道具が無いと加工出来ない革もあるらしいが、買わないと損する物ばかりらしいから俺が気に入らない時は町の技術者にでも依頼するとしよう。

「くれぐれも粗相の無いように」
 はいはい、分かってますって。
 バカデカイ扉を他の人が開けてくれる。

 どうもどっかの部屋とかじゃなくて玉座のある場所で話をするようだ。
 謁見の場とか言うのか?とにかく人の数が多い。周りには全身武装した騎士が大量にいる。逃げるだけならどうにでもなると思うが、リルが別室に居るのも気になる。

 いざって時の人質代わりのつもりかな?
 俺より強い存在が人質ってのは笑える。
 っともう王様の御前か。
 俺は跪いて待つ、少ししてカシャカシャと鎧が擦れる音がした。
 暫く黙って待つと。

「面を上げよ」
 言われたので顔を上げた。

 こいつがドワル・クラウンか。
 がたいの良いオッサンってのが一番の印象だ。だた問題はこいつはかなり強いって事だ。今まで強い連中ばっかりの森に居たから分かる、爺さんや親父さん程では無いが上位の魔物クラス程には強い。

 俺一人じゃ手に負えないな、戦闘は避ける方向でいこう。

「名と職業は」
「リュウです。職業は調教師です」
「調教師、あの革は盗んだ物か?」
 盗んでねーよ。一応そう言われる覚悟はしておいたがいきなりか。

「いえ、あれは皆で狩った獲物の革です。決して盗んだ物ではありません」
「……そうか。では、どのような者達と共に狩りをした?これほどの魔物を狩る者達、ぜひ聞いておきたい」
「彼らに名などありません。ただの狩人でした」
「通り名ぐらいはあったであろう」
「覚えがありません」
 ここはハッキリと言っておかないと。

 爺さんを疑う訳じゃ無いがこのオッサン信用出来ない。俺の『第六感』も信用出来ない、と判断してる。しかもこの反応は危険サインだ。

「まぁ良い。お前の持って来た革は全て買い取らせて頂く、問題無いか」
「問題あります。一部の革は私の防具として加工するつもりです」
 周りも反応し始めたか。確実に戦闘に入る準備してやがる。

「では要るものを取れ。残りは買い取る」
「いえ残りませんよ」
「なに?」
「あなたに売る革は無いと言ったんです」
 分かりやすいぐらいに怒ってる、血管浮き出てるぞ。

「どういう意味か分かって言っているのだな?」
「はい。あなたは信用出来ない」
「その男を捕まえろ」
 周りの騎士が俺を捕まえた。

「抵抗しないのか」
「抗ってもムダな気がして」
「そこだけは賢明な判断だったな。牢に入れておけ‼」

 さてと。リル後は頼むぞ。