まさか爺さんの言ってた人が王様なんて聞いてねぇよ‼

「ドワル・クラウンさん……じゃなくて様は王様って本当ですか?」
「事実です。ドワル様はここ100年ほどこの国を統治しています」
 何てこったい!依頼しようとした人が王様何て‼

『リュウ。そのドワルって人がどうしたの?』
 まだ俺の腕にいたリルが起きた。どうも寝てたせいで聞いてなかったよう。
 とにかく今の状況をリルにも分かるように説明しないと。

『どうも服を作って貰おうとしてた人がこの国のボスだったらしい』

 スキル『念話』でリルと話す。
 このスキルはリルと契約した時に得たスキルだが、実は使い勝手が悪い。
 話す距離に制限は無いが、代わりに『名付け』によって生まれた魂の繋がりを利用したもののようで、簡単に言うと名付けした者か、同じ者に名付けられた者同士でしか使えない微妙スキルなのだ。

 と言っても仲間内で相談する時にはこのように便利ではある。他の人に盗み聞きされる心配は少ない。

『そっか。偉いドワーフだったんだ』
『そうなんだよ。おかげで他の人に依頼せざるおえないかもな』
『……そういえばお祖父様がいざとなったら自分の牙をその人に見せれば大丈夫って言ってたような?』

 爺さんの牙って俺が貰ったあの牙か?でもどっちにしても一度会わないと分かんないか……

「あの一度ドワル様に御目に掛かる事は出来ますか?」
「え、お会いするのですか?」
「はい。出来れば売る相手の顔は覚えておきたいので」
「……少々お待ちを」

 ずっと後ろで待機していた人に、多分偉い人にこの事を伝えるためにどっか行った。
 ところで俺は入国出来るのか?

「あの、入国の方は問題無いのですよね」
「はい。そちらは問題ありません」
 あ、それはよかった。入国も出来なかったらヤバすぎる。

「なら話が終わるまで国内を見ていて良いですか?」
「申し訳ありません。ドワル様の連絡が入るまではご入国はお待ち下さい」

 それはそうだ。ただ何か情報が欲しいな、とりあえず世間話みたいな内容から話してみるか。

「すみません。国内でこの子一緒に泊まれる宿はありますか?」
「従魔と一緒に泊まれる宿は国内に入って右側の道を進んで三つ目の宿にあります」
「ありがとうございます。この子寂しがり屋でできるだけ一緒に居てあげたいので、安心しました」
「いえ、商人が多く来る国なので馬等を停めて置く場所も必用なのですよ」
 こんな感じで話をする。ちっこい事でも情報は必用だからな。

「ドワル様がお会いするそうです!」
 あ、帰って来た。てか会ってくれるんだ。てっきり代理の人が来るとばっかり思ってた。

「いつ頃になります?」
「明日の13時に時間を取れるそうです」
「なら、それまでその宿でごろごろしてようかな」
『私美味しいの食べたい』
 とりあえず今日はゆっくり休んでから明日王様に会ってみるか。

「では明日お迎えに参ります」
「あ、よろしくお願いします」