とりあえず、リルと俺の二人旅は始まった。
 最初の行き先はドワーフの国。

「ドワーフの国はどんな所なの?」
 リルは爺さんに聞いてないのか?

「鉱山の麓にある国らしい。鉱山の鉄を加工して武器を作ったり、鎧を作って大きくなった国らしい」
「あまり美味しい物は無さそうね」
 ちょっと残念そうなリル。
 でもただの鉱山都市でもないぞ。

「美味いか不味いかは行かないとわからんが、交易都市でもあるから他の国の美味い物はあるかもよ?」
「なら楽しみ」
 リルはまた尻尾を振り始めた。そういやリルのキャラが変わってきてるような?

「なぁリル。お前キャラ変わってね?」
「変わったって言うよりは、素の自分でいられてる。って言った方が正しいかも」
「素って、お前そんな子供ぽかったのか?」
「まぁね。お嬢様も意外と大変なのよ。皆の前ではキリッとしてなきゃいけないとか、誰にも甘えず孤高を気取らなきゃいけない、みたいな」
「じゃ今は?」
「リュウとイチャイチャしながら甘えたい!」

 そう言って俺の腕にしがみつく。
 あの、リルさん。腕に柔らかいものがくっついてますよ?俺ムッツリだから指摘しませんよ?
 そんな俺の邪心に気付かず腕に頬擦りまでしてくる。

 そういや、よく考えると普段と変わんない気がする。
 俺はよくリルの腹を枕代わりに寝ていた。リルはその時いつも身体を丸めて俺に頬擦りをしてた。

 ただ今は、リルが人の形になっているから普段と身長が逆転。俺の方がデカくなって、リルが小さくなった。だからこんな感じになってるのか。
 そう考えると何て事ないんだなぁ。

「待てやゴラ‼」
 おお、人だ‼久し振りに見たな俺以外の人間‼

「その荷物全部置いてきな!」
 10人ほどの男達が取り囲んできた。
「リュウの知り合い?」

「いやいや、この人達は山賊って言って、他人の物を勝手に奪いに来る人達だよ」
「へぇ。それって凄いの?」
「いや全く」

「テメェら何のんきに喋ってんだよ‼アンコラ‼」
 山賊Aが話してきた。
「頭、いいからさっさと身ぐるみ剥いでやりましょうぜ‼」
「女は奴隷として売っちまいましょうぜ‼」
 BとCがAを煽る。
「それもそうだな。殺るぞお前ら!ガキは殺せ!女は殺すなよ‼」
「「「おお‼」」」
 山賊の集団が襲ってきた。

「どうするリル?」
 一応の質問。ま、答えはわかるけど。
「向こうが殺す気ならこっちも殺してあげましょう」
「あいよ~」

 そして俺はスキル『身体能力強化』を使って一番近くの山賊を思い切り殴った。もっと正確に言うなら胸を殴った。心臓を停めるように。
 実際そいつは直ぐに動かなくなった。

「何しやがった‼」
 面倒臭いが半分は同じように心臓を停めた。その時やっと俺の実力に気がついたらしい。

「こ、こいつ強え!」
「なら女を人質に!?」
 あ~あ。バカな奴ら、俺より強いリルに手を出すとは。
 あれ、でも今は人間型になってるけど戦闘能力はどうなってんだ?
 とりあえずリルを見てると。

「触れるな。劣等種ども」
 あ、いつもの斬撃でバラバラにしちゃった。
 リルは自分の爪と暴風魔法の合体技が一番得意だったりする。
 元々この技は爺さんが造ったらしくフェンリルなら誰でも出来る。ただこの技だけならリルは爺さんより強い。
 まぁ、つまり残りの残党はリルが全部殺しました。

「やっぱり人間って弱い」
「そう言うなよ。強い奴は強い、弱い奴は弱い。の一声何だから」
「そう言うリュウはその人達から何を盗ってるの?」
「金だよ金。迷惑料金ぐらいは頂いていかないと」
「悪《わる》だリュウは悪《わる》だ」
「俺の事嫌いになった?」
「ううん。大好き‼」
「じゃあ問題無い」
 こんなずれた二人の旅はドワーフの国まで後三日ほどである。