服屋のおばちゃんから聞いた情報を頼りに国を歩くが近付けば近付くほど人気がなくなり、表の道に比べどこか侘しさを感じる。
家がぼろけりゃ壁もぼろい、そんな場所にハガネは居るのか?
「リュウさんこの場所治安が悪そうですよ」
「さっきのおばさんも言ってたろ。ここは治安悪いって。詳しい理由までは知らねぇがこの先にハガネが居るなら仕方ねぇ」
アリスは情報部のくせに治安悪いところが苦手とか久しぶりに残念なところが出たな。
おばちゃんの話では古びた道場に居るらしいがどうなんだか。
「リュウ、ここではないか?」
「……マジか」
本当にボロボロの道場で屋根はシミだらけ壁は傷だらけと本当に名のある鍛冶師が住む道場とは思えねぇ。
ただ妙なのはほとんどの傷は切り傷の様になっている事、とてつもなく鋭利な刃物によって切られた傷の様に見える。
「ダハーカはどう思う」
「この傷か?魔術によるものではないのは確かだ」
「じゃあこの傷全部か」
「誰じゃ儂の家をじろじろ見とんのは!」
ダハーカと傷について話していると酔っぱらった爺さんがふらふらとおぼつかない足取りで歩いている。
片手には酒が入った瓢箪、もう片方には杖を持って顔は赤い。
しかし今の発言が確かならこの酔っ払いがハガネか?
「悪いな爺さん、ちょっと人探ししてたんだ」
「あん?人探しだ~?」
「ハガネって鍛冶師を探してる。爺さん知ってるか?」
「…………ハガネってのは儂だが鍛冶はもうやっちょらん。刀が欲しけりゃ他当たれ」
そう言って道場の方に行こうとする爺さん、ふらっと壁に当たりそうなのを慌てて支える。
この人がハガネなら色々聞きたい事はある。
「とりあえず危なっかしいから道場まで送るよ」
「道場は目の前じゃ!」
「若いのが爺さんに手貸してんだから甘えとけ」
「嫌じゃ嫌じゃ!そこまで老けとらん!」
駄々をこねるが構わず肩を貸す。
小汚い道場の中には布団が敷いてあった。
そこに爺さんを転がすとあっと言う間に寝た。
布団の周りには空になった酒瓶が転がっているせいか酒臭い。
中庭で待っていた皆に会って刀の素振りをする。
「リュウ次はどうするの?」
「どうするって言われてもな……とりあえず別に教えてくれる人を探すしかねぇな」
リルの質問に答えながらとにかく素振りをする。
ロウと蒼流をまだ使いこなせてないのは自分でも分かる。
だからこそ使いこなすためにこの国に来たがどうも当てが外れたらしい。
ハガネと言う爺さんは断るどころか酒で寝てるし、正直どうしていいか分からない。
とりあえず一心に蒼流で素振りをしていると明らかに質の悪そうなチンピラが敷地内に入ってきた。
「何だ、まだあの爺さんの門下生が居たのか?」
「しかも上玉も居るじゃねぇか。借金の多寡として連れて行くか?」
「その前に味見ぐれぇはしてぇなぁ」
どうやらこの下品な連中はリル達を狙っている様子。
よし殴るか。
「あ~頭いてぇ、また飲みすぎちまったわい」
空気を読んでか知らずか爺さんが起きてきた。
爺さんは杖を突きながら俺達の横を通ってチンピラの前に出る。
「こいつらはただの飲み過ぎた儂を運んだだけ、儂と関係ないわ」
「うっせな。なら金払えや!」
「おぬしらに借りた金などない。さっさと帰れ」
静かな態度であるが爺さんから覇気を感じる。
ここは手を出さずお手並み拝見といこうか。
肩を抜いて襲い来るチンピラ、爺さんはチンピラの動きを読んで軽い足取りで避ける。
避けながら手にした杖でチンピラの足首を殴る。
殴って転ばしたチンピラに杖の先端を向けるとチンピラは動けなくなった。
爺さんの動きを見て分かったのは足の動き一つ一つに技術があった事。
無駄なく効率的に動く事で相手より一歩先に動ける技術は確かに欲しい。
おそらく杖の動きにも刀の事について何か学ぶところがある気がする。
チンピラ達はすぐに逃げ出し、どっかに行った。
「巻き込んですまんかったな。早くこっから去れ」
振り向いて言った爺さんはどこか寂しげに見えた。
必要最小限で繰り出す技術は今の俺にとって最も欲しい技術だ。
「今の動きを見て余計爺さんの技術が欲しいって思った。去る気はない」
「またあんなのに絡まれるぞ」
「あの程度なんて事無い。それにこいつ等の力をもっと引き出したい」
「こいつ等?その妖刀か」
「話が早くて助かる俺はこいつ等の力を十分に引き出すために爺さんに会いに来た」
爺さんはロウと蒼流をじっと見て言う。
「随分と癖の強そうな妖刀じゃな」
「だからここに来た」
「何度も同じ事を抜かすな。しかしお主は刀を使わずに直接殴っているようだが?」
「それは殺さないため。近々殺し合いになりそうな雰囲気なんでね、リル達を守るためにさらに腕を磨きたい」
俺の顔を見た爺さんは道場の方に戻ってしまう。
やはりダメかな。と思っていたら木刀を一本俺に投げる。
それをキャッチすると爺さんは「とりあえず一回だけ素振りしてみぃ」と言った。
俺は言われた通りに一回だけ素振りをした。
「……本当に基礎だけは出来とると言った感じか。ほれ儂と打ち合ってみい」
「いや、刀は本当に素人同然で」
「いいから来い、実戦的な剣を学びたいのじゃろ?なら儂と打ち合ってみると良い、良い経験になるじゃろ」
片手で構える爺さんに対して俺は両手で構える。
そこからは一方的にぼこぼこにされた。
振りかぶって頭を狙えば簡単に木刀が弾かれるし、突きの様に一直線で攻めれば逆に間合いを詰められ腹に木刀が入る、とにかく数で攻めようと早く木刀を動かすがわずかな隙で突きを決められた。
アオイとの修行でも力を一点に集中する事で無駄をなくすのはしたが爺さんの場合は動き一つ一つまでが無駄のないように動いている。
例えば足の動き方、俺は足を前に出す際に片足を前に出すが爺さんは片足を曲げる事によって一歩先に動いていた。
爺さんの動きはそういった無駄のない動きによって全て俺より一歩先を行っていた。
「あ~負けた」
「負けたと言うがお主は筋は良い。途中から儂の動きを真似し様としておったじゃろ」
「でも意識してもかなり難しい。しばらく練習しないと自然とは出来そうにない」
「当り前じゃ、そう簡単に出来てたまるか」
「でも爺さんそんなに強いのに何でここにいんだ?」
ぼろぼろの道場に多分住居だったであろうぼろぼろの家、爺さんの力なら弟子入りしたい者は多いと思うが……
「……大した理由ではない。ここが儂の家だからじゃ、文句あるか?」
「爺さんが良いなら良いけど」
「ふん」
爺さんはまた道場に戻り空き瓶を片付け始めた。
俺も何となく手伝うと他の皆も協力してくれた。
リルなんかは鼻が良いので酒臭さに顔をしかめていたが汚いのが嫌いなのでする。
カリンは弱い炎で汚れた部分を焼いている。
そんな感じで掃除を続けていたらあっという間にきれいになった。
「お主ら宿はもう取ったのか?」
「ん?ああまだだったな」
掃除をしている内にだいぶ日が傾いていた。
今から大勢の人数を止めてくれる宿はあるだろうか。
「ならここに泊まっていくとええ、布団ならある」
「え、良いのか爺さん」
「食費は自分で賄えよ、それ以外は修業と儂の世話じゃ」
「……そこまで老けてないんじゃなかったのか?」
「弟子が師匠の世話をするのは当然じゃ」
そう言う事で俺達は爺さん改め、師匠の下で修業する事が決まった。
家がぼろけりゃ壁もぼろい、そんな場所にハガネは居るのか?
「リュウさんこの場所治安が悪そうですよ」
「さっきのおばさんも言ってたろ。ここは治安悪いって。詳しい理由までは知らねぇがこの先にハガネが居るなら仕方ねぇ」
アリスは情報部のくせに治安悪いところが苦手とか久しぶりに残念なところが出たな。
おばちゃんの話では古びた道場に居るらしいがどうなんだか。
「リュウ、ここではないか?」
「……マジか」
本当にボロボロの道場で屋根はシミだらけ壁は傷だらけと本当に名のある鍛冶師が住む道場とは思えねぇ。
ただ妙なのはほとんどの傷は切り傷の様になっている事、とてつもなく鋭利な刃物によって切られた傷の様に見える。
「ダハーカはどう思う」
「この傷か?魔術によるものではないのは確かだ」
「じゃあこの傷全部か」
「誰じゃ儂の家をじろじろ見とんのは!」
ダハーカと傷について話していると酔っぱらった爺さんがふらふらとおぼつかない足取りで歩いている。
片手には酒が入った瓢箪、もう片方には杖を持って顔は赤い。
しかし今の発言が確かならこの酔っ払いがハガネか?
「悪いな爺さん、ちょっと人探ししてたんだ」
「あん?人探しだ~?」
「ハガネって鍛冶師を探してる。爺さん知ってるか?」
「…………ハガネってのは儂だが鍛冶はもうやっちょらん。刀が欲しけりゃ他当たれ」
そう言って道場の方に行こうとする爺さん、ふらっと壁に当たりそうなのを慌てて支える。
この人がハガネなら色々聞きたい事はある。
「とりあえず危なっかしいから道場まで送るよ」
「道場は目の前じゃ!」
「若いのが爺さんに手貸してんだから甘えとけ」
「嫌じゃ嫌じゃ!そこまで老けとらん!」
駄々をこねるが構わず肩を貸す。
小汚い道場の中には布団が敷いてあった。
そこに爺さんを転がすとあっと言う間に寝た。
布団の周りには空になった酒瓶が転がっているせいか酒臭い。
中庭で待っていた皆に会って刀の素振りをする。
「リュウ次はどうするの?」
「どうするって言われてもな……とりあえず別に教えてくれる人を探すしかねぇな」
リルの質問に答えながらとにかく素振りをする。
ロウと蒼流をまだ使いこなせてないのは自分でも分かる。
だからこそ使いこなすためにこの国に来たがどうも当てが外れたらしい。
ハガネと言う爺さんは断るどころか酒で寝てるし、正直どうしていいか分からない。
とりあえず一心に蒼流で素振りをしていると明らかに質の悪そうなチンピラが敷地内に入ってきた。
「何だ、まだあの爺さんの門下生が居たのか?」
「しかも上玉も居るじゃねぇか。借金の多寡として連れて行くか?」
「その前に味見ぐれぇはしてぇなぁ」
どうやらこの下品な連中はリル達を狙っている様子。
よし殴るか。
「あ~頭いてぇ、また飲みすぎちまったわい」
空気を読んでか知らずか爺さんが起きてきた。
爺さんは杖を突きながら俺達の横を通ってチンピラの前に出る。
「こいつらはただの飲み過ぎた儂を運んだだけ、儂と関係ないわ」
「うっせな。なら金払えや!」
「おぬしらに借りた金などない。さっさと帰れ」
静かな態度であるが爺さんから覇気を感じる。
ここは手を出さずお手並み拝見といこうか。
肩を抜いて襲い来るチンピラ、爺さんはチンピラの動きを読んで軽い足取りで避ける。
避けながら手にした杖でチンピラの足首を殴る。
殴って転ばしたチンピラに杖の先端を向けるとチンピラは動けなくなった。
爺さんの動きを見て分かったのは足の動き一つ一つに技術があった事。
無駄なく効率的に動く事で相手より一歩先に動ける技術は確かに欲しい。
おそらく杖の動きにも刀の事について何か学ぶところがある気がする。
チンピラ達はすぐに逃げ出し、どっかに行った。
「巻き込んですまんかったな。早くこっから去れ」
振り向いて言った爺さんはどこか寂しげに見えた。
必要最小限で繰り出す技術は今の俺にとって最も欲しい技術だ。
「今の動きを見て余計爺さんの技術が欲しいって思った。去る気はない」
「またあんなのに絡まれるぞ」
「あの程度なんて事無い。それにこいつ等の力をもっと引き出したい」
「こいつ等?その妖刀か」
「話が早くて助かる俺はこいつ等の力を十分に引き出すために爺さんに会いに来た」
爺さんはロウと蒼流をじっと見て言う。
「随分と癖の強そうな妖刀じゃな」
「だからここに来た」
「何度も同じ事を抜かすな。しかしお主は刀を使わずに直接殴っているようだが?」
「それは殺さないため。近々殺し合いになりそうな雰囲気なんでね、リル達を守るためにさらに腕を磨きたい」
俺の顔を見た爺さんは道場の方に戻ってしまう。
やはりダメかな。と思っていたら木刀を一本俺に投げる。
それをキャッチすると爺さんは「とりあえず一回だけ素振りしてみぃ」と言った。
俺は言われた通りに一回だけ素振りをした。
「……本当に基礎だけは出来とると言った感じか。ほれ儂と打ち合ってみい」
「いや、刀は本当に素人同然で」
「いいから来い、実戦的な剣を学びたいのじゃろ?なら儂と打ち合ってみると良い、良い経験になるじゃろ」
片手で構える爺さんに対して俺は両手で構える。
そこからは一方的にぼこぼこにされた。
振りかぶって頭を狙えば簡単に木刀が弾かれるし、突きの様に一直線で攻めれば逆に間合いを詰められ腹に木刀が入る、とにかく数で攻めようと早く木刀を動かすがわずかな隙で突きを決められた。
アオイとの修行でも力を一点に集中する事で無駄をなくすのはしたが爺さんの場合は動き一つ一つまでが無駄のないように動いている。
例えば足の動き方、俺は足を前に出す際に片足を前に出すが爺さんは片足を曲げる事によって一歩先に動いていた。
爺さんの動きはそういった無駄のない動きによって全て俺より一歩先を行っていた。
「あ~負けた」
「負けたと言うがお主は筋は良い。途中から儂の動きを真似し様としておったじゃろ」
「でも意識してもかなり難しい。しばらく練習しないと自然とは出来そうにない」
「当り前じゃ、そう簡単に出来てたまるか」
「でも爺さんそんなに強いのに何でここにいんだ?」
ぼろぼろの道場に多分住居だったであろうぼろぼろの家、爺さんの力なら弟子入りしたい者は多いと思うが……
「……大した理由ではない。ここが儂の家だからじゃ、文句あるか?」
「爺さんが良いなら良いけど」
「ふん」
爺さんはまた道場に戻り空き瓶を片付け始めた。
俺も何となく手伝うと他の皆も協力してくれた。
リルなんかは鼻が良いので酒臭さに顔をしかめていたが汚いのが嫌いなのでする。
カリンは弱い炎で汚れた部分を焼いている。
そんな感じで掃除を続けていたらあっという間にきれいになった。
「お主ら宿はもう取ったのか?」
「ん?ああまだだったな」
掃除をしている内にだいぶ日が傾いていた。
今から大勢の人数を止めてくれる宿はあるだろうか。
「ならここに泊まっていくとええ、布団ならある」
「え、良いのか爺さん」
「食費は自分で賄えよ、それ以外は修業と儂の世話じゃ」
「……そこまで老けてないんじゃなかったのか?」
「弟子が師匠の世話をするのは当然じゃ」
そう言う事で俺達は爺さん改め、師匠の下で修業する事が決まった。