あれからさらに数日が過ぎ決闘の日が来た。
決闘の日まで修行してきたティア達、その表情は力強い。
おそらくこの表情が魔物と戦うときの顔なんだろう、多くの騎士たちを率いてきた勇者の顔。
うん。今日は楽しめそうだ。
「リュウさん本当に、本当に殺しちゃダメですよ」
なぜかセコンドとして俺に付き添っているアリスがそこに居た。
修行中は俺やティア達のマネージャーの様に水やタオルを持って来ていたからどこか良い所で観戦するのかな~ぐらいは思っていたがまさか俺のセコンドになるとは思っていなかった。
「せめてティアのとこに居ろよ」
「これも隊長からの指示なんです。私はリュウさん専門の諜報員になれとまで言われたんですからね、隊長と何かありました?」
「大した事じゃない、俺の事を教会が目を付けたって話しかしてねぇよ」
「十分大問題じゃないですか……」
アリスはため息を付きながら一緒にいる。
こいつも何だかんだでお人好しというか、お節介と言うか……
「ま、何かあっても大丈夫だろ」
「気楽ですねぇ。教会は国よりも一部力が大きいですし情報に関してはピカイチですよ」
「ふん、居るか居ないかもわからん神を崇める詐欺師なんぞ殴って黙らせればいい」
「物騒な事は言わないでください。どこで聞き耳立ててるか分かりませんよ」
俺は特に気にせずゲートに向かう。
ゲートの先から観客の熱気が伝わる。
「それにしてもなんで客なんか入れたんだ?ただの野良試合だろ」
「噂はすぐに広がりましたからね、噂を聞き付けた他の人達が黙ってなかったんだと思いますよ」
「どんだけ娯楽が少ないんだよ。これじゃ剣闘士にでもなった気分だ」
「観客から見れば大差ないでしょうね」
と言っても観客から見ればつまんない試合になると思うけどな。
まず武器の使用はドワルから渡された刃が潰れた鈍らのみ。
次に魔術は有りだが俺は使ってはいけない。
スキルの使用は全て可。
最後に殺すな。
と、なっていて俺への制限は意外と厳しい。
せっかくダハーカと魔術を練習したのに無駄になってしまった。少し残念。
おそらくドワルが危惧したのは禁術の事だと思うが俺にはまだ使えない。
ダハーカがサポートしてくれればどうにかなるが俺一人では出来ない。
「なのに魔術禁止しやがって」
「肉弾戦だけでもすごく強いのに魔術まで使われたら八百長にすらなりませんよ」
そう、結局八百長をする事になった。
ティアの体裁のためにも俺は敗れるべきだとティアに強く言ったら渋々了承してくれた。
その代わり今度お願いを聞けと、どうなるか分からない願いを聞く事になった……ああ怖い。
『それでは両選手入場です‼』
完全に娯楽感覚だな。
気に入らん。
「上手く立ち回ってください」
「俺が言い出したんだからそりゃするよ」
こうして砂だらけの舞台の上を歩きだした。
観客から大きな歓声と共にティアと向かい合う。
「今日はよろしくねリュウ」
「間違って殺さないよう頼むぞ」
「こんな剣じゃ殺せないから安心して」
「そうかよ」
お互いに剣を構えながら試合開始の合図を待つ、一人の敵を前に集中する。
観客の声は遠ざかり、ひどく静かに感じる。
ただ一点、ティアの目を見る。
『始め!』
審判の掛け声とともにティアが俺に向かって走って来た。
俺は静かに剣で防ぐ、しばらくティアの猛攻を防いでティアの癖を探る。
この癖さえ見極める事さえ出来れば勝つ事も負ける事も簡単だ。
しかし防いでいるだけでは観客もつまらないだろう、だから一度間合いを詰めてそのまま押し出す。
「ふっ」
ティアはその力に抵抗せず、むしろその力を使って後ろに自ら下がった。
下がったのを見て俺は前に出る。
今度は互いに剣をぶつけ合った。
俺が斬り掛かればティアが守り、守った後に斬り掛かられる。
斬り返しの連続で観客は盛り上がる。
「ねえリュウ」
「なんだよこんな時に」
切り返し連続で一度互いに下がった後ティアが話しかけてきた。
「なんか楽しい!」
「うおっと!」
話しながら上段からの剣を慌てて剣で防ぐ。
そのまま膠着状態になるとまた話しかけてくる。
「リュウとこんな風になった事無いからすんごく楽しいの!」
「こんな風って!?」
「リュウと喧嘩!した事なかったから今楽しい!」
「俺の周りは戦闘狂ばっかりか!?」
また俺は離すためにまた押し出すがすぐに斬り掛かって来るので俺も応戦せざる負えない。
しかし俺はちょっとした隙でティアを蹴り飛ばした。
普通の人っぽく蹴るのも楽じゃねぇな。
しかしティアは空中で回転して威力を流す。
そして華麗に着地すると突きの様に剣を出すので躱した。
「戦闘狂じゃないよ。リュウと遊ぶのが楽しいだけ」
そのまま走り抜けると光の魔術を撃ってくる。
俺は覇気を纏わせた剣で全て受け流す、受け流した魔術は壁に衝突したが特に傷はない。
受け流している内にまた斬り掛かってきたティアを今度は俺から迎え撃つ。
連続で斬り掛かる俺の軽い攻撃をティアも軽く躱す。
一応ティアが目で終えるぎりぎりの速度で攻撃しているがちゃんと気配で躱しているようだ。
「何が遊ぶだ!こんな危険な遊びやめちまえ!」
「だってずっと剣の練習とか魔術の授業とかで遊べなかった……」
少しティアの剣が軽い、そのまま振り抜きティアに軽いダメージを負わせる。
顔を軽く掠ったぐらいだが初めての攻撃が当たった。
「すぐにタイガが来て少しだけ遊べたけどまだ足りない、まだ足りないって思った」
マリアさんに教えて貰ったのか複数の付加術を自身に掛け始めた。
確か勇者の様な職業はバランスがいいと聞いたが手数が多くて厄介だな。
そしてさっきよりも早く、重い一撃が俺の手の甲に当てた。
俺がつい剣を落としてしまったのでとにかく後ろに下がることでぎりぎりのところを躱し続ける。
「リュウが居ないだけでとっても寂しかった。多分だけどお腹を食い千切られた時走馬燈を見た、思い出したのはリュウと遊んだ時の事ばっかり。その時分かったの私はリュウの事が好きだったんだって」
壁に追い込まれてもティアは手を緩める事はせず、徹底的に俺を倒しに来る。
時々俺に軽く当たるが少しずつ速度が上がり、力を抜いた状態では限界が近い。
なのにティアの言葉ははっきりと聞こえる。
「だからこの前の時は傷付いた、私はリュウを思っていたけどリュウは私を思ってなかった。でも、諦め切れない」
強い言葉とともにティアの目は強く金色に輝く。
ティアの身体を覆うオーラも力強い金色に輝変化した。
詳しくは分からないが何かがティアの中で吹っ切れたようだ。
おそらく原因は俺だ。
「だからリュウ、これは私の勝手で言わせてもらうね。私は諦めない、リルさんにもカリンちゃんにもオウカちゃんにもアオイさんにも負けない。だからずっと好きでも良いですか?」
八百長だから負けるのが良いのは分かるがこのせいで色々と負けた気がする。
ある意味重いと言える恋心だが良いか。
ティアの剣が俺に迫るが俺はガードしない、多分幕引きはこのタイミングが良いだろう。
さてと、これが終わった後なんて答えようか。
頭に重い一撃がかかると俺は気絶した。
決闘の日まで修行してきたティア達、その表情は力強い。
おそらくこの表情が魔物と戦うときの顔なんだろう、多くの騎士たちを率いてきた勇者の顔。
うん。今日は楽しめそうだ。
「リュウさん本当に、本当に殺しちゃダメですよ」
なぜかセコンドとして俺に付き添っているアリスがそこに居た。
修行中は俺やティア達のマネージャーの様に水やタオルを持って来ていたからどこか良い所で観戦するのかな~ぐらいは思っていたがまさか俺のセコンドになるとは思っていなかった。
「せめてティアのとこに居ろよ」
「これも隊長からの指示なんです。私はリュウさん専門の諜報員になれとまで言われたんですからね、隊長と何かありました?」
「大した事じゃない、俺の事を教会が目を付けたって話しかしてねぇよ」
「十分大問題じゃないですか……」
アリスはため息を付きながら一緒にいる。
こいつも何だかんだでお人好しというか、お節介と言うか……
「ま、何かあっても大丈夫だろ」
「気楽ですねぇ。教会は国よりも一部力が大きいですし情報に関してはピカイチですよ」
「ふん、居るか居ないかもわからん神を崇める詐欺師なんぞ殴って黙らせればいい」
「物騒な事は言わないでください。どこで聞き耳立ててるか分かりませんよ」
俺は特に気にせずゲートに向かう。
ゲートの先から観客の熱気が伝わる。
「それにしてもなんで客なんか入れたんだ?ただの野良試合だろ」
「噂はすぐに広がりましたからね、噂を聞き付けた他の人達が黙ってなかったんだと思いますよ」
「どんだけ娯楽が少ないんだよ。これじゃ剣闘士にでもなった気分だ」
「観客から見れば大差ないでしょうね」
と言っても観客から見ればつまんない試合になると思うけどな。
まず武器の使用はドワルから渡された刃が潰れた鈍らのみ。
次に魔術は有りだが俺は使ってはいけない。
スキルの使用は全て可。
最後に殺すな。
と、なっていて俺への制限は意外と厳しい。
せっかくダハーカと魔術を練習したのに無駄になってしまった。少し残念。
おそらくドワルが危惧したのは禁術の事だと思うが俺にはまだ使えない。
ダハーカがサポートしてくれればどうにかなるが俺一人では出来ない。
「なのに魔術禁止しやがって」
「肉弾戦だけでもすごく強いのに魔術まで使われたら八百長にすらなりませんよ」
そう、結局八百長をする事になった。
ティアの体裁のためにも俺は敗れるべきだとティアに強く言ったら渋々了承してくれた。
その代わり今度お願いを聞けと、どうなるか分からない願いを聞く事になった……ああ怖い。
『それでは両選手入場です‼』
完全に娯楽感覚だな。
気に入らん。
「上手く立ち回ってください」
「俺が言い出したんだからそりゃするよ」
こうして砂だらけの舞台の上を歩きだした。
観客から大きな歓声と共にティアと向かい合う。
「今日はよろしくねリュウ」
「間違って殺さないよう頼むぞ」
「こんな剣じゃ殺せないから安心して」
「そうかよ」
お互いに剣を構えながら試合開始の合図を待つ、一人の敵を前に集中する。
観客の声は遠ざかり、ひどく静かに感じる。
ただ一点、ティアの目を見る。
『始め!』
審判の掛け声とともにティアが俺に向かって走って来た。
俺は静かに剣で防ぐ、しばらくティアの猛攻を防いでティアの癖を探る。
この癖さえ見極める事さえ出来れば勝つ事も負ける事も簡単だ。
しかし防いでいるだけでは観客もつまらないだろう、だから一度間合いを詰めてそのまま押し出す。
「ふっ」
ティアはその力に抵抗せず、むしろその力を使って後ろに自ら下がった。
下がったのを見て俺は前に出る。
今度は互いに剣をぶつけ合った。
俺が斬り掛かればティアが守り、守った後に斬り掛かられる。
斬り返しの連続で観客は盛り上がる。
「ねえリュウ」
「なんだよこんな時に」
切り返し連続で一度互いに下がった後ティアが話しかけてきた。
「なんか楽しい!」
「うおっと!」
話しながら上段からの剣を慌てて剣で防ぐ。
そのまま膠着状態になるとまた話しかけてくる。
「リュウとこんな風になった事無いからすんごく楽しいの!」
「こんな風って!?」
「リュウと喧嘩!した事なかったから今楽しい!」
「俺の周りは戦闘狂ばっかりか!?」
また俺は離すためにまた押し出すがすぐに斬り掛かって来るので俺も応戦せざる負えない。
しかし俺はちょっとした隙でティアを蹴り飛ばした。
普通の人っぽく蹴るのも楽じゃねぇな。
しかしティアは空中で回転して威力を流す。
そして華麗に着地すると突きの様に剣を出すので躱した。
「戦闘狂じゃないよ。リュウと遊ぶのが楽しいだけ」
そのまま走り抜けると光の魔術を撃ってくる。
俺は覇気を纏わせた剣で全て受け流す、受け流した魔術は壁に衝突したが特に傷はない。
受け流している内にまた斬り掛かってきたティアを今度は俺から迎え撃つ。
連続で斬り掛かる俺の軽い攻撃をティアも軽く躱す。
一応ティアが目で終えるぎりぎりの速度で攻撃しているがちゃんと気配で躱しているようだ。
「何が遊ぶだ!こんな危険な遊びやめちまえ!」
「だってずっと剣の練習とか魔術の授業とかで遊べなかった……」
少しティアの剣が軽い、そのまま振り抜きティアに軽いダメージを負わせる。
顔を軽く掠ったぐらいだが初めての攻撃が当たった。
「すぐにタイガが来て少しだけ遊べたけどまだ足りない、まだ足りないって思った」
マリアさんに教えて貰ったのか複数の付加術を自身に掛け始めた。
確か勇者の様な職業はバランスがいいと聞いたが手数が多くて厄介だな。
そしてさっきよりも早く、重い一撃が俺の手の甲に当てた。
俺がつい剣を落としてしまったのでとにかく後ろに下がることでぎりぎりのところを躱し続ける。
「リュウが居ないだけでとっても寂しかった。多分だけどお腹を食い千切られた時走馬燈を見た、思い出したのはリュウと遊んだ時の事ばっかり。その時分かったの私はリュウの事が好きだったんだって」
壁に追い込まれてもティアは手を緩める事はせず、徹底的に俺を倒しに来る。
時々俺に軽く当たるが少しずつ速度が上がり、力を抜いた状態では限界が近い。
なのにティアの言葉ははっきりと聞こえる。
「だからこの前の時は傷付いた、私はリュウを思っていたけどリュウは私を思ってなかった。でも、諦め切れない」
強い言葉とともにティアの目は強く金色に輝く。
ティアの身体を覆うオーラも力強い金色に輝変化した。
詳しくは分からないが何かがティアの中で吹っ切れたようだ。
おそらく原因は俺だ。
「だからリュウ、これは私の勝手で言わせてもらうね。私は諦めない、リルさんにもカリンちゃんにもオウカちゃんにもアオイさんにも負けない。だからずっと好きでも良いですか?」
八百長だから負けるのが良いのは分かるがこのせいで色々と負けた気がする。
ある意味重いと言える恋心だが良いか。
ティアの剣が俺に迫るが俺はガードしない、多分幕引きはこのタイミングが良いだろう。
さてと、これが終わった後なんて答えようか。
頭に重い一撃がかかると俺は気絶した。