午前の修業が終わるとそこにはピクリとも動かないティアがいた。
午後の修行より時間は短いのにこの疲弊はヤバい。
マリアさんが大慌てでヒールを連続でかけるが全く動かない。
そして俺はティアをそんな風にした張本人達に問い詰めていた。
「で、何であんな事になってんだ?」
「だって、鍛えて欲しいって言われたから……」
「でも加減ぐらいは出来たろ」
「し、しかしすぐにリュウと同じぐらいに強くなりたいと言っていたのだ!」
「……保護者二人、俺も見て見ぬふりをしてたからあまり強くは言えないがああなる前に止めてくれよ」
「あの子、勇者のくせに根性ないのよ」
「申し訳ありませんリュウ様。勇者だと思いつい加減を間違えてしまいました」
俺は皆の声にため息をつく。
そりゃ俺も悪いよ。止めなかった俺が悪い。
しかもよく考えればこうなるのは予想できたんじゃないか?
カリンとオウカは子供で手加減が出来ない。
常に全力で攻撃してくるこの子達には勇者とは言え未成熟と言える身では荷が重い。
リルとアオイは所々手加減している場面はあったが、それでも十分に脅威といえる力で迫った。
リルは牙も爪も使わなかったが、ご自慢のスピードは抑えてない。
おかげでティアは防御に集中していても、背中や足に、体勢が揺らいだ一瞬に攻撃を受け続けていた。
アオイはリルほどではないが防御に力を注ぎ、いくら攻撃しても通じないという精神的にキツイやり方で修業をつけていた。
おかげでティアは御覧の通りだ。
「カリンちゃん、オウカちゃんもう少しだけ抑えて……リルさん速過ぎ……アオイさん硬過ぎ……」
「ティアちゃんしっかりして!もう修業は終わったのよ!」
「止めて、お腹に頭突きは止めて……」
「ティア!しっかりするんだ!」
「うう、攻撃当たんない……攻撃通じない……」
「そう滅多にあんな化けもんと当んないからしかっりしろ嬢ちゃん!」
ぽつぽつと弱音が出るたびに他の勇者パーティーに励まされるティア、見ていて可哀想だ。
そんな光景から一度視線を戻し、皆を見る。
「大体何でお前らがティアの修業を手伝う事になったんだ?」
まずそこを聞かないと質問のしようがない。
何でそうなったのか、まず知っとかないと。
そう言うと皆は顔を合わせて困った顔をする。
「何だ言えないのか?」
「女の友情?」
カリンが代表してか、そんな事を言う。
これじゃらちが明かない、仕方ないのでティアに聞くとにしよう。
まだうつ伏せで、ぽつぽつさっきまでの恐怖言っていたが、俺は顔を軽く叩きながら聞いた。
「おーい、何であんな無茶したんだ?」
「……ないしょ」
「はぁ?」
「だからないしょ」
ようやく正気になったと思ったらこれだ。
カリンが言った女の友情とかのせいか、無理に聞いても答えなさそうだし、とにかく今は休ませるか。
とりあえずティアを抱き上げて観客席まで跳んだ。
ここなら砂も付かないからいいだろう。
ティアをそっと下した後、俺はまたリル達の前に立った。
「とりあえずやり過ぎるな。午後も相手するのか?」
「そのつもり」
「なら手加減ぐらいはしてやれ。午後はダハーカとの修業があるから、そっちの様子見る暇ないからな」
一応注意だけして午前は終わった。
午後はダハーカの魔術レッスンだが、今日はどうしてもティアが気になる。
午後は勇者パーティー全員でリル達に挑む様だが、まるで相手になってない。
オウカには力ずくで突破されるし、カリンは熱風を操り後衛のタイガやマリアさんにもダメージをあたえ、リルは前衛のティアとグランさんを追い付かせず、アオイは一応対峙してくれたが硬過ぎてダメージがない。
簡単に言えば勇者パーティー全員でも相手にならなかった。
俺はダハーカとの修業でそれどころじゃなかったし、一応は午前より手加減はしていたので言えなかった。
午後の修業を終わった頃には皆ぼろぼろだ。
「えっと、生きてますか~?」
「「「「……………」」」」
返事がない、気絶してた。
仕方ないので皆を担いで宿まで帰った。
もちろんゲンさんとアリスも手伝ってくれた。
帰ってもずっとぐったりしていた勇者パーティーはまさに生きた死体、精気が全然ない。
リル達はまさかこうなるとは思ってなかった様子で、多分皆俺を基準に修業をつけていたのだろう。
その後無理矢理飯だけは食わせたが後はベッドに寝かせておいた。
俺は自分の部屋でぼーっとしているとノックされた。
「どした?」
「勇者パーティーの皆様がリビングに集まっております。何でもリュウ様にアドバイスを頂きたいと」
「分かった、今行く」
アドバイス?リル達の対策か?
まぁ良いけど。
そう思ってリビングに行くと動きがやけに硬い勇者パーティーがいた。
「どうした?わざわざ俺にアドバイスを聞きに来るなんて」
「このままじゃこのパーティーは全滅します。力を貸して下さい」
「やめろよタイガ、俺に敬語なんて。気持ち悪いから普通に話せ」
「リュウは一体どうやってリルさん達に勝ったんですか?」
他の三人はろくに動けないのか俺に目線を送るばかりで話してこない。
と言うかこの質問は少し難しいな。
「正直言うとこの中で俺が勝った事があるのはオウカとダハーカ、アオイの三人だけだ。と言ってもダハーカの場合は一人で勝ったとは言いづらいけど」
「いや、あの勝負はリュウの勝ちだ。リュウが仲間に頼ったのは、私の眷属の排除のみ。私に勝ったのは確かだ」
「ありがとダハーカ。でも基準ぐらいはくれ。せめてこうなりたいぐらいは言ってもらえないと、アドバイスのしようがない」
「せ、せめてあの動きを、追える様になりたい……」
ティアがあまり動かない口を動かして言った。
その言葉に頷く他三人、まぁまずはそこからか。
「俺は『五感強化』ってスキルがあるから見えてるが、多分ティア達にはないんだろ?そうなると気配で察するしかないな」
「気配?」
「そう。ティア達は多分目に頼り過ぎてる。だから目に見えないほど速い相手になると、動きに全く追いつかないから簡単にやられる。もう少し勘を信じてみたらどうだ?」
「勘を信じる?」
「そうそう。今まで戦ってきた経験からくるものの方が多いし、たまには何となく危ないとかを信じてみろ。そうすりゃ自然と身に付く」
「…………それって一朝一夕じゃできないよね」
「だからそこは経験あるのみだな。でも実戦の経験はあるだろうし、そこからなんかのヒントぐらいはあるんじゃないか?」
俺もフェンリルの子供達との鬼ごっこは大変だったよ。
基礎体力作りとして爺さんに言われてやったが、全く捕まえられなかった。
目に見えないから勘に頼ってる内に、第六感を手に入れたんだよな。
「子供の無邪気さが初めて怖いと思った」
「マリアさん。チビ達の動きは単純なので、よく見れば分かりますよ」
「だってあの速度でお腹に来るのよ!」
「俺がオウカを一方的にボコれたのは動きが単純だからです。マリアさんは後衛専門だったので怖いでしょうが怖がらずしっかりと見て下さい」
普通の人間から見たらオウカのタックルすら危険なものか。
俺から見れば単純で分かり易いんだけどな。
「どうしたらアオイ殿にダメージを与えられる?」
「アオイはドラゴンなので普通に殴っただけではダメージなんて当てられません。俺がやってるのは力を一点に集中するやり方ですが剣で出来るかな……」
「一点集中か。なら突きでならどうにかなるだろうか?」
「どうでしょう?口では簡単ですがかなり難しい技術です。俺もアオイの修行をしている内に出来るようになったものですからね、ハードモードで一週間はかかるかな……」
俺がアオイにしてもらったのがハードモードらしいが慣れるのに大分時間がかかったからな。
「魔術が通じません。どうしたらいいかな?」
「無理。仲間のサポートに周れ」
「ちょっと!僕にだけ厳しくない!?」
「だって皆魔術効かねぇんだもん。魔術を弾いたり、焼いたり、毛に沿って通り過ぎたり。ダハーカからアドバイスある?」
「私達に効く魔術は主に最上位魔術だけだ。しかし私が教えても魔力が足りず失敗するだろう」
はい八方塞がりです。
攻撃したかったら身体鍛えな。
おそらく皆期待していたのと違う結果だったかも知れないが仕方ないだろ、俺の嫁とダチは皆最強さんなんだから。
そんなすぐに超えられるなら俺の立つ瀬がないよ。
とりあえず今日はこの質問に答えただけで帰って行った。
明日はちゃんと見とかないとダメかも。
午後の修行より時間は短いのにこの疲弊はヤバい。
マリアさんが大慌てでヒールを連続でかけるが全く動かない。
そして俺はティアをそんな風にした張本人達に問い詰めていた。
「で、何であんな事になってんだ?」
「だって、鍛えて欲しいって言われたから……」
「でも加減ぐらいは出来たろ」
「し、しかしすぐにリュウと同じぐらいに強くなりたいと言っていたのだ!」
「……保護者二人、俺も見て見ぬふりをしてたからあまり強くは言えないがああなる前に止めてくれよ」
「あの子、勇者のくせに根性ないのよ」
「申し訳ありませんリュウ様。勇者だと思いつい加減を間違えてしまいました」
俺は皆の声にため息をつく。
そりゃ俺も悪いよ。止めなかった俺が悪い。
しかもよく考えればこうなるのは予想できたんじゃないか?
カリンとオウカは子供で手加減が出来ない。
常に全力で攻撃してくるこの子達には勇者とは言え未成熟と言える身では荷が重い。
リルとアオイは所々手加減している場面はあったが、それでも十分に脅威といえる力で迫った。
リルは牙も爪も使わなかったが、ご自慢のスピードは抑えてない。
おかげでティアは防御に集中していても、背中や足に、体勢が揺らいだ一瞬に攻撃を受け続けていた。
アオイはリルほどではないが防御に力を注ぎ、いくら攻撃しても通じないという精神的にキツイやり方で修業をつけていた。
おかげでティアは御覧の通りだ。
「カリンちゃん、オウカちゃんもう少しだけ抑えて……リルさん速過ぎ……アオイさん硬過ぎ……」
「ティアちゃんしっかりして!もう修業は終わったのよ!」
「止めて、お腹に頭突きは止めて……」
「ティア!しっかりするんだ!」
「うう、攻撃当たんない……攻撃通じない……」
「そう滅多にあんな化けもんと当んないからしかっりしろ嬢ちゃん!」
ぽつぽつと弱音が出るたびに他の勇者パーティーに励まされるティア、見ていて可哀想だ。
そんな光景から一度視線を戻し、皆を見る。
「大体何でお前らがティアの修業を手伝う事になったんだ?」
まずそこを聞かないと質問のしようがない。
何でそうなったのか、まず知っとかないと。
そう言うと皆は顔を合わせて困った顔をする。
「何だ言えないのか?」
「女の友情?」
カリンが代表してか、そんな事を言う。
これじゃらちが明かない、仕方ないのでティアに聞くとにしよう。
まだうつ伏せで、ぽつぽつさっきまでの恐怖言っていたが、俺は顔を軽く叩きながら聞いた。
「おーい、何であんな無茶したんだ?」
「……ないしょ」
「はぁ?」
「だからないしょ」
ようやく正気になったと思ったらこれだ。
カリンが言った女の友情とかのせいか、無理に聞いても答えなさそうだし、とにかく今は休ませるか。
とりあえずティアを抱き上げて観客席まで跳んだ。
ここなら砂も付かないからいいだろう。
ティアをそっと下した後、俺はまたリル達の前に立った。
「とりあえずやり過ぎるな。午後も相手するのか?」
「そのつもり」
「なら手加減ぐらいはしてやれ。午後はダハーカとの修業があるから、そっちの様子見る暇ないからな」
一応注意だけして午前は終わった。
午後はダハーカの魔術レッスンだが、今日はどうしてもティアが気になる。
午後は勇者パーティー全員でリル達に挑む様だが、まるで相手になってない。
オウカには力ずくで突破されるし、カリンは熱風を操り後衛のタイガやマリアさんにもダメージをあたえ、リルは前衛のティアとグランさんを追い付かせず、アオイは一応対峙してくれたが硬過ぎてダメージがない。
簡単に言えば勇者パーティー全員でも相手にならなかった。
俺はダハーカとの修業でそれどころじゃなかったし、一応は午前より手加減はしていたので言えなかった。
午後の修業を終わった頃には皆ぼろぼろだ。
「えっと、生きてますか~?」
「「「「……………」」」」
返事がない、気絶してた。
仕方ないので皆を担いで宿まで帰った。
もちろんゲンさんとアリスも手伝ってくれた。
帰ってもずっとぐったりしていた勇者パーティーはまさに生きた死体、精気が全然ない。
リル達はまさかこうなるとは思ってなかった様子で、多分皆俺を基準に修業をつけていたのだろう。
その後無理矢理飯だけは食わせたが後はベッドに寝かせておいた。
俺は自分の部屋でぼーっとしているとノックされた。
「どした?」
「勇者パーティーの皆様がリビングに集まっております。何でもリュウ様にアドバイスを頂きたいと」
「分かった、今行く」
アドバイス?リル達の対策か?
まぁ良いけど。
そう思ってリビングに行くと動きがやけに硬い勇者パーティーがいた。
「どうした?わざわざ俺にアドバイスを聞きに来るなんて」
「このままじゃこのパーティーは全滅します。力を貸して下さい」
「やめろよタイガ、俺に敬語なんて。気持ち悪いから普通に話せ」
「リュウは一体どうやってリルさん達に勝ったんですか?」
他の三人はろくに動けないのか俺に目線を送るばかりで話してこない。
と言うかこの質問は少し難しいな。
「正直言うとこの中で俺が勝った事があるのはオウカとダハーカ、アオイの三人だけだ。と言ってもダハーカの場合は一人で勝ったとは言いづらいけど」
「いや、あの勝負はリュウの勝ちだ。リュウが仲間に頼ったのは、私の眷属の排除のみ。私に勝ったのは確かだ」
「ありがとダハーカ。でも基準ぐらいはくれ。せめてこうなりたいぐらいは言ってもらえないと、アドバイスのしようがない」
「せ、せめてあの動きを、追える様になりたい……」
ティアがあまり動かない口を動かして言った。
その言葉に頷く他三人、まぁまずはそこからか。
「俺は『五感強化』ってスキルがあるから見えてるが、多分ティア達にはないんだろ?そうなると気配で察するしかないな」
「気配?」
「そう。ティア達は多分目に頼り過ぎてる。だから目に見えないほど速い相手になると、動きに全く追いつかないから簡単にやられる。もう少し勘を信じてみたらどうだ?」
「勘を信じる?」
「そうそう。今まで戦ってきた経験からくるものの方が多いし、たまには何となく危ないとかを信じてみろ。そうすりゃ自然と身に付く」
「…………それって一朝一夕じゃできないよね」
「だからそこは経験あるのみだな。でも実戦の経験はあるだろうし、そこからなんかのヒントぐらいはあるんじゃないか?」
俺もフェンリルの子供達との鬼ごっこは大変だったよ。
基礎体力作りとして爺さんに言われてやったが、全く捕まえられなかった。
目に見えないから勘に頼ってる内に、第六感を手に入れたんだよな。
「子供の無邪気さが初めて怖いと思った」
「マリアさん。チビ達の動きは単純なので、よく見れば分かりますよ」
「だってあの速度でお腹に来るのよ!」
「俺がオウカを一方的にボコれたのは動きが単純だからです。マリアさんは後衛専門だったので怖いでしょうが怖がらずしっかりと見て下さい」
普通の人間から見たらオウカのタックルすら危険なものか。
俺から見れば単純で分かり易いんだけどな。
「どうしたらアオイ殿にダメージを与えられる?」
「アオイはドラゴンなので普通に殴っただけではダメージなんて当てられません。俺がやってるのは力を一点に集中するやり方ですが剣で出来るかな……」
「一点集中か。なら突きでならどうにかなるだろうか?」
「どうでしょう?口では簡単ですがかなり難しい技術です。俺もアオイの修行をしている内に出来るようになったものですからね、ハードモードで一週間はかかるかな……」
俺がアオイにしてもらったのがハードモードらしいが慣れるのに大分時間がかかったからな。
「魔術が通じません。どうしたらいいかな?」
「無理。仲間のサポートに周れ」
「ちょっと!僕にだけ厳しくない!?」
「だって皆魔術効かねぇんだもん。魔術を弾いたり、焼いたり、毛に沿って通り過ぎたり。ダハーカからアドバイスある?」
「私達に効く魔術は主に最上位魔術だけだ。しかし私が教えても魔力が足りず失敗するだろう」
はい八方塞がりです。
攻撃したかったら身体鍛えな。
おそらく皆期待していたのと違う結果だったかも知れないが仕方ないだろ、俺の嫁とダチは皆最強さんなんだから。
そんなすぐに超えられるなら俺の立つ瀬がないよ。
とりあえず今日はこの質問に答えただけで帰って行った。
明日はちゃんと見とかないとダメかも。