フォールクラウンにしては珍しく大したチェックもされず帰ってきたがこの雰囲気は何だ?
殺気立ってると言うか、何と言うか。
とにかく今が緊急事態であるのは間違いないようだ。
リルもこの国に入ってから俺の中に戻っていった。
「こりゃ一体どうなってんだ?」
「この雰囲気、大型の魔物が国に接近した時と雰囲気が似てる」
「大型の魔物?帰って来る時そんな気配はしなかったが……」
ティアの説明によると大抵は大森林から出てきた魔物が現れるとこうなるとか、大森林の魔物は多くの国から恐れられているのは知っている。
ただティアから見てもこれ程の緊張感を出すのは珍しいとか。
「つまりこれは数百年に一度のとんでもない魔物が出てきた可能性が高いって事か」
「そうなるね」
「でもそれが本当なら他の国からも救援が必要なんじゃないか?特にライトライトとか」
「そうね。でもまだ何の魔物が出てきたかは把握できてないみたい。多分あそこに居るのは偵察隊だろうからこれから確認しに行くと思うよ」
ティアが言っているのは多分移動重視なのか最低限の胸当てなどの装備を付けた兵士の事だろう。
馬を用意している所を見ると少し離れた所にいるようだ。
「ティア無事ですか!?」
「ティアちゃ~ん!」
「嬢ちゃん無事か!?」
「勇者様!リュウさん生きてますか!?」
わらわらと出てきたのは勇者パーティーとアリスだった。
人を掻き分け近付いて来る。
俺はティアの背を押して行けと促す。
ティアは俺に一つお辞儀をするとタイガ達に所に行った。
ゲンさんの姿が見えないのは何故だ?
この騒動に関する情報を探しているのか?
「まさかこんな状況に出くわすとは私達も運がありませんね」
「え、マークさん?」
突然現れたマークさんに俺は驚いた。
何せ声を掛けられるまで気付けなかった。
やはりこの人は……
「お久しぶりです。この国に来てから会えなかったの心配しましたよ。どこにいたんですか?もしかして商人仲間の所ですか?」
「いえ、少し上司の所で商売についての報告をしていました。心配をかけたようですみません」
「いえ無事ならいいんですよ。それよりこの騒動は一体?」
「情報が確かならドラゴンが大森林から出て来たそうです」
「ドラゴン?弱い奴ですか、それとも伝説級の?」
「さぁどうでしょう。それを確認しに今から向かうようですからね」
そう言ってさっきの集団に目を向ける。
普段は使われない巨大な方の門開けているのが見える。
大門を開くとはそれだけの事態って事か。
「リュウさんはどう思います?まだドラゴンが居るか居ないか」
「さぁな、興味ない」
「それは残念。ドラゴンの血の一滴にまで破格の値段が出るほどですから興味あるのですが、リュウさんには興味ありませんか」
「俺は食う目的以外では滅多に生物を殺さねーよ。殺す時は相手が嫁やダチを殺しに来る時だ」
「とても分かりやすく好感が持てます」
いつもの商人スマイル、でも今日はいつもと違うように感じる。
何となく違う。
「……一つ契約、いえお願いを聞いて貰えますか」
「お願い?珍しいですね。いつもはお願いじゃなくて契約しませんか?って言ってきますのに」
「あはは、自分でもビックリです。不確かなお願いをする何て」
どこか乾いた笑みで言うマークさん。
目をあっちこっちに動かしながら、言葉を選びながら言った。
「何時の日か私を雇っていただけませんか?」
「雇う?今の仕事に何か不満でも?」
「不満ではなく貴方とならもっと大きな事が出来ると思ったからです。なので頭の片隅にでも覚えてくれればと」
「俺、雇用云々は全くの素人だけど良いのですか?」
「構いません。私は貴方の元で働きたい」
そんな強く言われちゃ断れねぇな。
雇用云々は後で学ぶか。
「分かりました。その時はよろしくお願いします」
「私こそいきなりこんな事を言ってすみません。では私はこれからポーションを売りに行くのでまたその内」
「はい、またその内」
そう言ってマークさんは人混みに消えた。
本当に言いたい事はあれだけだったのだろうか?
「リュウ、今の男は」
「止めろよダハーカ。あの人もダチだ」
今まで黙っていたダハーカがマークさんが居なくなると声を掛けてきた。
いつも謎の雰囲気を纏っているあの人もきっと何かあるんだろう。
「それよりこの騒動絶対俺達のせいだよな」
「だろうな。私の存在に気付いた者は少ないと思うが警戒はしておくか」
まぁ国に入れた時点でだませているとは思うけど。
しっかしこの騒動がどのぐらい広がってるかが問題なんだよな。
近隣諸国からは色々説明しないといけない様な事も出るだろうし、居なくてもしばらくは警戒するだろう。
そうなると外で修業は出来ないな。
「リュウさんも大丈夫ですか?」
「お、アリス。勇者様の相手しなくていいのか?」
「勇者様には皆さんが居るので問題ありません。しかしその人は?」
アリスがダハーカを見て首を傾げる。
そう言えば何て言おう。
素直にアジ・ダハーカです、とは言えないしな。
「私はリュウの友人で名はダハーカだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします、ダハーカさん。リュウさんのご友人はイケメンですね」
あれ?普通に受け入れてる。
てっきりダハーカの名は売れまくってると思ってたが違うのか?
アリスはダハーカの身体を珍しそうに触っている。
「リュウよ。この少女は?」
「こいつはアリス。一応十九歳」
「一応とは何ですか一応とは」
一応の言葉に頬を膨らますアリス。
やっぱり子供にしか見えない。
「リュウ、それでは宿の方に行こうか。この国に来たばかりで私には泊まる場所がない」
「ああ、そうだな。ドワルに聞いて同じ宿に入れさせて貰えないかな?」
「それは聞いてみないと分かりませんね。でもリュウさんならすんなり聞いてくれるんじゃないですか?」
「ま、泊まる泊まらないはおいといて今はとりあえず俺達の宿に行くか」
仕方ないので今泊まっている宿に三人揃って向かう。
ダハーカが通るたびに女性の目が輝いている様に見えるのは気のせいだろうか?
冒険者から見ると俺と一緒にいると言うだけで普通じゃないレッテルが貼られている様だがこれは逆に好都合か?
俺と言う化物と一緒に居ればある程度やり過ぎても受け入れてくれそうだし、上手く誤魔化せそう。
問題は禁呪を使わないかだが……そこは強く言って聞かせれば問題ないか。
ダハーカは話が通じない相手じゃないし。
しかし宿は表向きはそんなにバタバタしていなかった。
裏でこっそりと動いているのは気配で分かるがこんな時ぐらいバタバタしても仕方ないと思うぞ。
支配人俺達の出迎えをしてくれた時にダハーカを見たがすぐに部屋を用意してくれた。
ダハーカの部屋も家みたいな状態だったので男子部屋から移動させてもらう。
だってやっぱりダハーカを一人にしておく訳にはいかないじゃん。
「リュウは良いのか?友人なのだろ?」
「ダハーカもダチだろ。俺が決めたんだ、ついでにリル達もこの部屋の中なら自由に出来るから都合よかったし」
そう言うと俺の中からリル達が出てきて思い思いにくつろぎ始める。
リルはソファーでくつろぐし、カリンとオウカはベッドの上で飛び跳ねている、アオイは部屋に備え付けられていた茶葉でお茶を入れ始める。
「皆最近は俺の中にずっと居てつまんなそうだったし良い気分転換になると思う。だから気にすんな」
「その様だな。しかしリュウ、まさかティアマトまでお前の仲間になるとは。私が言うのもなんだが規格外だな」
「そりゃどうも。あと今度魔術教えてくれよ、出来るだけ戦闘に使えるやつ」
「もう私の知識から魔術は使えるだろう?」
「所詮知識は知識だ。教科書読んですぐに理解出来るほど俺の頭はよくない」
「そうか、では今度教えるとしよう」
「頼む」
「リュウ様、お茶が入りました。カリン様、オウカ様いい加減淑女としての自覚をお持ちください」
「ベッドふかふか!」
「なのだ!」
「二人とも埃が舞うから止めなさい!」
そんな光景を見て俺は落ち着く。
ダハーカも笑いを堪えながらこの光景を見ていた。
殺気立ってると言うか、何と言うか。
とにかく今が緊急事態であるのは間違いないようだ。
リルもこの国に入ってから俺の中に戻っていった。
「こりゃ一体どうなってんだ?」
「この雰囲気、大型の魔物が国に接近した時と雰囲気が似てる」
「大型の魔物?帰って来る時そんな気配はしなかったが……」
ティアの説明によると大抵は大森林から出てきた魔物が現れるとこうなるとか、大森林の魔物は多くの国から恐れられているのは知っている。
ただティアから見てもこれ程の緊張感を出すのは珍しいとか。
「つまりこれは数百年に一度のとんでもない魔物が出てきた可能性が高いって事か」
「そうなるね」
「でもそれが本当なら他の国からも救援が必要なんじゃないか?特にライトライトとか」
「そうね。でもまだ何の魔物が出てきたかは把握できてないみたい。多分あそこに居るのは偵察隊だろうからこれから確認しに行くと思うよ」
ティアが言っているのは多分移動重視なのか最低限の胸当てなどの装備を付けた兵士の事だろう。
馬を用意している所を見ると少し離れた所にいるようだ。
「ティア無事ですか!?」
「ティアちゃ~ん!」
「嬢ちゃん無事か!?」
「勇者様!リュウさん生きてますか!?」
わらわらと出てきたのは勇者パーティーとアリスだった。
人を掻き分け近付いて来る。
俺はティアの背を押して行けと促す。
ティアは俺に一つお辞儀をするとタイガ達に所に行った。
ゲンさんの姿が見えないのは何故だ?
この騒動に関する情報を探しているのか?
「まさかこんな状況に出くわすとは私達も運がありませんね」
「え、マークさん?」
突然現れたマークさんに俺は驚いた。
何せ声を掛けられるまで気付けなかった。
やはりこの人は……
「お久しぶりです。この国に来てから会えなかったの心配しましたよ。どこにいたんですか?もしかして商人仲間の所ですか?」
「いえ、少し上司の所で商売についての報告をしていました。心配をかけたようですみません」
「いえ無事ならいいんですよ。それよりこの騒動は一体?」
「情報が確かならドラゴンが大森林から出て来たそうです」
「ドラゴン?弱い奴ですか、それとも伝説級の?」
「さぁどうでしょう。それを確認しに今から向かうようですからね」
そう言ってさっきの集団に目を向ける。
普段は使われない巨大な方の門開けているのが見える。
大門を開くとはそれだけの事態って事か。
「リュウさんはどう思います?まだドラゴンが居るか居ないか」
「さぁな、興味ない」
「それは残念。ドラゴンの血の一滴にまで破格の値段が出るほどですから興味あるのですが、リュウさんには興味ありませんか」
「俺は食う目的以外では滅多に生物を殺さねーよ。殺す時は相手が嫁やダチを殺しに来る時だ」
「とても分かりやすく好感が持てます」
いつもの商人スマイル、でも今日はいつもと違うように感じる。
何となく違う。
「……一つ契約、いえお願いを聞いて貰えますか」
「お願い?珍しいですね。いつもはお願いじゃなくて契約しませんか?って言ってきますのに」
「あはは、自分でもビックリです。不確かなお願いをする何て」
どこか乾いた笑みで言うマークさん。
目をあっちこっちに動かしながら、言葉を選びながら言った。
「何時の日か私を雇っていただけませんか?」
「雇う?今の仕事に何か不満でも?」
「不満ではなく貴方とならもっと大きな事が出来ると思ったからです。なので頭の片隅にでも覚えてくれればと」
「俺、雇用云々は全くの素人だけど良いのですか?」
「構いません。私は貴方の元で働きたい」
そんな強く言われちゃ断れねぇな。
雇用云々は後で学ぶか。
「分かりました。その時はよろしくお願いします」
「私こそいきなりこんな事を言ってすみません。では私はこれからポーションを売りに行くのでまたその内」
「はい、またその内」
そう言ってマークさんは人混みに消えた。
本当に言いたい事はあれだけだったのだろうか?
「リュウ、今の男は」
「止めろよダハーカ。あの人もダチだ」
今まで黙っていたダハーカがマークさんが居なくなると声を掛けてきた。
いつも謎の雰囲気を纏っているあの人もきっと何かあるんだろう。
「それよりこの騒動絶対俺達のせいだよな」
「だろうな。私の存在に気付いた者は少ないと思うが警戒はしておくか」
まぁ国に入れた時点でだませているとは思うけど。
しっかしこの騒動がどのぐらい広がってるかが問題なんだよな。
近隣諸国からは色々説明しないといけない様な事も出るだろうし、居なくてもしばらくは警戒するだろう。
そうなると外で修業は出来ないな。
「リュウさんも大丈夫ですか?」
「お、アリス。勇者様の相手しなくていいのか?」
「勇者様には皆さんが居るので問題ありません。しかしその人は?」
アリスがダハーカを見て首を傾げる。
そう言えば何て言おう。
素直にアジ・ダハーカです、とは言えないしな。
「私はリュウの友人で名はダハーカだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします、ダハーカさん。リュウさんのご友人はイケメンですね」
あれ?普通に受け入れてる。
てっきりダハーカの名は売れまくってると思ってたが違うのか?
アリスはダハーカの身体を珍しそうに触っている。
「リュウよ。この少女は?」
「こいつはアリス。一応十九歳」
「一応とは何ですか一応とは」
一応の言葉に頬を膨らますアリス。
やっぱり子供にしか見えない。
「リュウ、それでは宿の方に行こうか。この国に来たばかりで私には泊まる場所がない」
「ああ、そうだな。ドワルに聞いて同じ宿に入れさせて貰えないかな?」
「それは聞いてみないと分かりませんね。でもリュウさんならすんなり聞いてくれるんじゃないですか?」
「ま、泊まる泊まらないはおいといて今はとりあえず俺達の宿に行くか」
仕方ないので今泊まっている宿に三人揃って向かう。
ダハーカが通るたびに女性の目が輝いている様に見えるのは気のせいだろうか?
冒険者から見ると俺と一緒にいると言うだけで普通じゃないレッテルが貼られている様だがこれは逆に好都合か?
俺と言う化物と一緒に居ればある程度やり過ぎても受け入れてくれそうだし、上手く誤魔化せそう。
問題は禁呪を使わないかだが……そこは強く言って聞かせれば問題ないか。
ダハーカは話が通じない相手じゃないし。
しかし宿は表向きはそんなにバタバタしていなかった。
裏でこっそりと動いているのは気配で分かるがこんな時ぐらいバタバタしても仕方ないと思うぞ。
支配人俺達の出迎えをしてくれた時にダハーカを見たがすぐに部屋を用意してくれた。
ダハーカの部屋も家みたいな状態だったので男子部屋から移動させてもらう。
だってやっぱりダハーカを一人にしておく訳にはいかないじゃん。
「リュウは良いのか?友人なのだろ?」
「ダハーカもダチだろ。俺が決めたんだ、ついでにリル達もこの部屋の中なら自由に出来るから都合よかったし」
そう言うと俺の中からリル達が出てきて思い思いにくつろぎ始める。
リルはソファーでくつろぐし、カリンとオウカはベッドの上で飛び跳ねている、アオイは部屋に備え付けられていた茶葉でお茶を入れ始める。
「皆最近は俺の中にずっと居てつまんなそうだったし良い気分転換になると思う。だから気にすんな」
「その様だな。しかしリュウ、まさかティアマトまでお前の仲間になるとは。私が言うのもなんだが規格外だな」
「そりゃどうも。あと今度魔術教えてくれよ、出来るだけ戦闘に使えるやつ」
「もう私の知識から魔術は使えるだろう?」
「所詮知識は知識だ。教科書読んですぐに理解出来るほど俺の頭はよくない」
「そうか、では今度教えるとしよう」
「頼む」
「リュウ様、お茶が入りました。カリン様、オウカ様いい加減淑女としての自覚をお持ちください」
「ベッドふかふか!」
「なのだ!」
「二人とも埃が舞うから止めなさい!」
そんな光景を見て俺は落ち着く。
ダハーカも笑いを堪えながらこの光景を見ていた。