冬野さんは、私の事を石ちゃんって呼んだり、石崎さんって呼んだり、時々、君って呼んだりするな。
そんな事を考えながら、冬野さんの作ったカクテルに正直な賛辞を述べて時間を過ごした。
グラスがあいたのは26時半を回った頃で、ひろき君が一度トイレに起きて、冬野さんがその相手をしてまた寝かしつけ終わった頃には27時を過ぎていた。
私は、タクシー会社をネットで検索した。暫くして、ひろき君を寝かしつけた冬野さんが戻って来た。
「石ちゃん。石ちゃんが迷惑じゃなかったら、朝まで泊まっていかない? いくらタクシーでも、こんな夜中に一人で帰るのは危ないし、家族とか心配しているなら帰った方が良いとは思うけど」
私は少し考えて、もうあと少しで始発も動くし、もう少しいさせて貰う方が良いと思った。
「じゃぁ、そうさせて下さい。始発まであと2時間く」「いや、始発で帰るつもりなら、もうタクシーに放り込んで家の中に入るところまで運転手さんに付き添わせるよ」
そんな!!
「え、じゃぁ、泊まるなら何時までここに居たら良いんですか?」
「どんだけ、ここが嫌なんだよ」
「え、いや、そういう意味じゃなくて、えっと」
なぜだろう。
冬野さんと帰宅方法の論点が合わない。
私はすったもんだ冬野さんの交渉の末、朝ご飯を食べる時間までは冬野さんの家から出ないことで、冬野さんの家で泊まると言う方向に落ち着いた。
「石崎ちゃんって、いまいくつ?」
「26ですけど」
「そうなんだ」
「冬野さんはもうすぐ30ですよね」
冬野さんは頷いた。
3年振りに再会して、もしまた会わなくなってしまったら次冬野さんに会ったとき、お互いいくつになっているだろう。
もしかしたら、冬野さんはその時、私の知らない人と付き合って結婚しているかも知れない。
そう思うと、胸が苦しかった。
「石ちゃん。俺さ、本当にずっと…」
冬野さんがそう言いかけた時、客間からひろき君が起きてきた。