2034年 5月1日 彗星にて―
食事中、蓮がいきなり私たちの方へと走り寄って来た。
「新一!昨日はすまなかった。」
「あ、あぁ別にいいさ。確かにいきなり彼女を失ったら辛いもんな。私の解釈が至らなかったのが原因だ。」
「まぁそんなことはいいんだ。『俺』昨日の夜考えあげたんだ。ここは女王を殺せば帰って来るんじゃないかって。」
私は、蓮の一人称が『僕』から『俺』に変わっていることや、蓮の言ってる事のハチャメチャさに、嫌な予感がしたがそんな心配をしている暇もなく、蓮がたたみかけてきた。
「それで、新一さんなら協力してくれるんじゃないかって僕思いまして。」
「あ、あぁわかった。いいよ。」
蓮の顔がパァッと明るくなり頬に笑窪をつくりながら、頭を下げてきた。
「ありがとうございます!新一さん!」
その頃には、蓮の一人称は元通りになっていた。そんな事に気づく暇もなく、蓮は走り去ってしまった。
「はぁ…………。」
私の溜息だけがこの長い通路を木霊した。だからだろう、翔太がやってくるのに気が付かなかったのは。
「わっ!」
「う、うわっ!」
「あははははははっ、さすが新一。俺の思った通りの反応だったな。」
「おまっ、翔太ふざけんなよ。」
ずっと悩んでいた私の心の霧を消し去るような笑いだった。
「で、なんでそんな暗い顔してんの?」
翔太は気づいていたらしく私に聞いてきた。それなのに、やっぱり翔太がモテる理由だけが分からない。それでもせっかくなのでということで話した。
「実はさ―。」
「あー、な。しょうがないよ、彼女を失ったばかりなんだから。」
「そんなもんかな。」
「結局そんなもんだよ人間って。大切な人を守るためだったら何でもする。だから蓮もそう言ったんだろ。」
「そっか。じゃあ翔太も一緒に来いよ。」
そう言うと翔太は、見ただけでもわかるぐらいの嫌そうな顔をしていた。
「えぇ……めんどくさいな。」
「じゃあ、お前だけ飢えるか?」
「お前卑怯だぞ!」
「いつも卑怯な手を使っているのはどこのどちら様かな?」
そう言った瞬間、翔太は口ごもった。やっと納得してくれただろうか。
「しょうがない、俺もやるよ。」
「だとよ、蓮。」
「えっ!」
「翔太さん!ありがとう!」
「お前、そういうの本当に良くねぇぞ新一。」
「どういうのかな?」
「お前、あとで覚悟しとけよ!」
そんな風に叫ぶ翔太を後目に私はこの廊下を出て行った。
「おい待てよ。新一ーーー!」
「なんだってんだよ翔太!」
「俺を置いてかないでくれー。」
「ムリッ!」
「いくらなんでも無慈悲すぎる。」
「私には、残念ながら慈悲の念が無いのでね。」
「お前、本当に呪ってやるからな〜。」
「あー、はいはい。」
「『はい』は、1回だ〜。」
(あいつこんな時でもそこを気にすんのかよ)
そんなことを、考えながら歩いてくると、向こうから、亜紀がしょぼんとしながらこちらへ歩いて来ていた。
(亜紀ちゃんどうしたんだろう。)
「あーきーちゃん?どうしたの?」
「あ、新一さん。別に何も無いです。ただ友達を失って、悲しかっただけですから気にしないでください。」
「そっか。確かに辛いよな、友達を失うんだもんな。
済まなかった。」
「いえっ!新一さんは何も悪くないです。」
「ありがとう、でも、実際のところ私も悪いんだよ。」
「そんな……。」
「気遣いありがとう。」
「じゃあね。」
「えっ……。新一さん!どこに行くんですか?」
「それは、秘密。」
「ちょっと待って!女王を殺すんでしょ?なら寝てる所の方がいいの。いつも実態はそこに置いてるから。」
「そんなことを言っていいのか?」
「えぇ、女王を殺したいという願望は、一緒ですから。新一さん、任せましたよ。」
「わ、分かった。」
「じゃあ、また今度。」
そう言い残して亜紀は、支配者室へ帰って行った。
「任せましたよ……か。」
私は亜紀の、少し控えめな笑みを思い出しながら呟いていた。そこへ、女王の声が聞こえてきた。
「今すぐに、全ての人員が集まるように。」
時刻はもう、17時40分になっていた。
食事中、蓮がいきなり私たちの方へと走り寄って来た。
「新一!昨日はすまなかった。」
「あ、あぁ別にいいさ。確かにいきなり彼女を失ったら辛いもんな。私の解釈が至らなかったのが原因だ。」
「まぁそんなことはいいんだ。『俺』昨日の夜考えあげたんだ。ここは女王を殺せば帰って来るんじゃないかって。」
私は、蓮の一人称が『僕』から『俺』に変わっていることや、蓮の言ってる事のハチャメチャさに、嫌な予感がしたがそんな心配をしている暇もなく、蓮がたたみかけてきた。
「それで、新一さんなら協力してくれるんじゃないかって僕思いまして。」
「あ、あぁわかった。いいよ。」
蓮の顔がパァッと明るくなり頬に笑窪をつくりながら、頭を下げてきた。
「ありがとうございます!新一さん!」
その頃には、蓮の一人称は元通りになっていた。そんな事に気づく暇もなく、蓮は走り去ってしまった。
「はぁ…………。」
私の溜息だけがこの長い通路を木霊した。だからだろう、翔太がやってくるのに気が付かなかったのは。
「わっ!」
「う、うわっ!」
「あははははははっ、さすが新一。俺の思った通りの反応だったな。」
「おまっ、翔太ふざけんなよ。」
ずっと悩んでいた私の心の霧を消し去るような笑いだった。
「で、なんでそんな暗い顔してんの?」
翔太は気づいていたらしく私に聞いてきた。それなのに、やっぱり翔太がモテる理由だけが分からない。それでもせっかくなのでということで話した。
「実はさ―。」
「あー、な。しょうがないよ、彼女を失ったばかりなんだから。」
「そんなもんかな。」
「結局そんなもんだよ人間って。大切な人を守るためだったら何でもする。だから蓮もそう言ったんだろ。」
「そっか。じゃあ翔太も一緒に来いよ。」
そう言うと翔太は、見ただけでもわかるぐらいの嫌そうな顔をしていた。
「えぇ……めんどくさいな。」
「じゃあ、お前だけ飢えるか?」
「お前卑怯だぞ!」
「いつも卑怯な手を使っているのはどこのどちら様かな?」
そう言った瞬間、翔太は口ごもった。やっと納得してくれただろうか。
「しょうがない、俺もやるよ。」
「だとよ、蓮。」
「えっ!」
「翔太さん!ありがとう!」
「お前、そういうの本当に良くねぇぞ新一。」
「どういうのかな?」
「お前、あとで覚悟しとけよ!」
そんな風に叫ぶ翔太を後目に私はこの廊下を出て行った。
「おい待てよ。新一ーーー!」
「なんだってんだよ翔太!」
「俺を置いてかないでくれー。」
「ムリッ!」
「いくらなんでも無慈悲すぎる。」
「私には、残念ながら慈悲の念が無いのでね。」
「お前、本当に呪ってやるからな〜。」
「あー、はいはい。」
「『はい』は、1回だ〜。」
(あいつこんな時でもそこを気にすんのかよ)
そんなことを、考えながら歩いてくると、向こうから、亜紀がしょぼんとしながらこちらへ歩いて来ていた。
(亜紀ちゃんどうしたんだろう。)
「あーきーちゃん?どうしたの?」
「あ、新一さん。別に何も無いです。ただ友達を失って、悲しかっただけですから気にしないでください。」
「そっか。確かに辛いよな、友達を失うんだもんな。
済まなかった。」
「いえっ!新一さんは何も悪くないです。」
「ありがとう、でも、実際のところ私も悪いんだよ。」
「そんな……。」
「気遣いありがとう。」
「じゃあね。」
「えっ……。新一さん!どこに行くんですか?」
「それは、秘密。」
「ちょっと待って!女王を殺すんでしょ?なら寝てる所の方がいいの。いつも実態はそこに置いてるから。」
「そんなことを言っていいのか?」
「えぇ、女王を殺したいという願望は、一緒ですから。新一さん、任せましたよ。」
「わ、分かった。」
「じゃあ、また今度。」
そう言い残して亜紀は、支配者室へ帰って行った。
「任せましたよ……か。」
私は亜紀の、少し控えめな笑みを思い出しながら呟いていた。そこへ、女王の声が聞こえてきた。
「今すぐに、全ての人員が集まるように。」
時刻はもう、17時40分になっていた。