営業所に一人ずついる機関事務員と呼ばれる事務の職員が、全員の持ち物と机の中をチェックする。

持ち物は、営業かばんに入れていいものといけないもののチェック。
領収書や現金は決済したものをいつまでも職員が持っていてはいけない。
その日のうちに事務員へ渡さなければならない。

そして各人に貸与されているパソコンも外出時には電源を切り、USBとパソコン本体は別々に施錠できる所に保管しておかなければならない。

当然、自分の机やロッカーは外出時に施錠されていなければならない。

そんな山ほどある規則をたまにうっかりしていて守られていない事があり、そういう場合は注意を受けるのだ。

あたしはいつものように持ち出しケースを事務員の相川の専用箱へ入れた。

このケースは外出時に営業用のかばんに入れるもので、その中にも入れていいものと悪いものがある。

相川は慣れた手つきで片っ端から中身を確認していく。

あたしはデスクに戻り、今日行く予定の顧客のプランを再確認していた。
すると、いきなり相川があたしの名前を大声で呼んだ。

「飯田さん!ペナ(いち)!」

相川がこう言った時は、コンプライアンスに違反するものがケースに入っている事を意味する。

あたしはそんなミスはしていないと思っていたから、驚いた。