「ちょっと待って!飯田さん、一時の感情で決めちゃダメだよ」

眞子が慌ててあたしを止めたが、あたしにはこれ以外の選択はないような気がしていた。

「あたしと麻美は一心同体なんです…。大げさかもしれないけど…。この子がいなかったらあたし…、今までだってやってこれなかった…」

眞子も妙子もうつむいた。

一般的には一人でやるのが通常だけど、この仕事は一人でやっていると煮詰まる事も多い。

そんな時に同じ苦しみを共有できる仲間がいるのといないのとでは、気持ちの持ちようが全く違うのだ。

あたしは麻美を心の支えにしてる所が多々あったから、その麻美を失う事は片腕をもぎとられたも同然なのだ。

すると麻美が静かに口を開いた。

「尚美…あたしね、ずっと尚美の事うらやましいと思ってた…。あたしと違って何でもハキハキ言えて、誰にでも自分の意見をちゃんと言って…。人の気持ちを思いやる事もできるし…。あたしは絶対この人には敵わないって、思ってたの…。でも今、尚美に言われて…気づいたよ。ほんと、あたし達は二人で一人なんだよね…」

麻美が泣きながらあたしにそう言ったのを聞いてあたしは完全に涙腺が崩壊し、子供みたいに泣きじゃくった。

「麻美~…やめないでよぉ~…」

マスカラが落ちて黒い涙になっていると思うけど…
今はそんな事、どうだってよかった。


「…わかった…、尚美、あたしもうちょっと、頑張ってみるよ…」