くしくもその日に支社長自らが朝礼で話をする「支社長朝礼」が重なった。


あたしは朝からなかなか落着けなかった。

あれ以来支社長と顔を合わせるのは久しぶりだし、この嵐の前の静けさみたいなのが恐ろしくて仕方なかったのだ。

営業所に着いてみんなに朝の挨拶をしていると、支社長が所長とともに営業所に入ってきた。

「おはよう」

支社長はいつもと全く変わらぬ様子で職員たちと挨拶を交わしている。

あたしや眞子たちにも普通に挨拶し、藤堂にも挨拶をする。

そして藤堂をチラッと見ると向こうもこちらを見ていたらしく、目が合ってしまった。

通常の朝礼の後所長が支社長にバトンタッチをし支社長朝礼が始まった。

最初は締切日前日の発破かけ。
これはいつもの事。

他には営業に役に立ちそうなワンポイントアドバイスをくれ、それで終わるかと思っていると少しの間をあけ支社長が口を開いた。

「それから、今月いっぱいで退職する職員がいますので、今から挨拶をしてもらいます。
…藤堂マネージャー、前へ出て来て下さい」

え?退職?
藤堂が…?

驚きを隠せないでいると眞子も妙子も麻美も、全員が藤堂の方を振り返った。