「ちょっと…」

あたしが口を開こうとすると、とっさに妙子があたしの膝を一発平手で叩いた。

「痛っ!」

そしてあたしのかわりに眞子が、冷静さを保ったまま所長に尋ねる。

「所長…。どういう意味でしょうか?」

「フン…君たち二人はほんとに使えないって事だよ。自分たちの正義感なのか何なのか知らないけど、頭でっかちで言う事ばっかり一丁前なわりにはいつも結果が伴わないってね」

あたしは込み上げてくる怒りを抑えるのに必死だった…。
隣で妙子がずっとあたしの手を片手で握りしめてくれていなければ、あたしは何をしでかすかわからないくらい頭に来ていた。

「そんな事はないはずです…。毎月きちんと目標は達成していますし、目標額を越える事もあります。確かに同月ですぐに結果が出ない月もありますけど、それは、多少誰にでもあるのではないでしょうか?だから査定は毎月ではなく、三ヶ月という猶予を持たせているのではありませんか?」

眞子が所長に尋ねるが、所長の横柄さは相変わらずだ。

「だから。その成績を挙げるのだって、全部藤堂マネージャーが自分の顧客をまわしてるんでしょ?ある程度マネージャーがあたりをつけて、いけそうな顧客を君たちにまわしてるから、簡単に契約が取れる。まさか自分たちだけで契約取れてるって思ってないよね?」

この所長の言葉で眞子の顔色が変わった。