「お疲れ様でした。なかなか真面目に答えてましたね」

昔と同様無表情かつ抑揚のない声で氷メガネがそう言った。

「…………」

ムカついた勢いでしゃべったりしたらコイツとバトルになりかねないと思ったあたしは無言を貫く。
そんなあたしをよそにコイツは続けた。

「まさか飯田さんがまたうちと関わるなんてね。驚きです。二度と会わない、と思ってましたが」

あたしも出来ればそう願いたかったわよ…。
もちろん心の中で吐いただけで黙ったまま。

「まだ結果はわかりませんけどね…。あ、でも期待はしないで下さい」

氷メガネのその発言に一瞬カァッと頭に血が上った。

コイツ絶対にあたしを煽ってる。
ここであたしを怒らせて落とす理由にしたいんだ。
そうに決まってる。

コイツの思惑通りになんてなってたまるか。
昔のあたしとは違うんですからね!

そう思っているとタイミングよくエレベーターがやってくる。
中へ乗り込んだあたしは、氷メガネに向かって丁寧に頭を下げて言った。

「今日はどうもありがとうございました」

閉まって行くドアの向こうで氷メガネの冷たい瞳があたしを刺すように見ていた。

アイツが内務次長のままでは面接に受かる見込みは限りなく薄い。

いや、絶対に無理だ。
あたしの中で忘れたくても忘れられない苦い思い出が脳裏をかすめる。

あたしはその足で再びハローワークに向かい求人の閲覧をした。

年齢、職種…なかなかいい仕事はないな…。
給料がいい所は時間が不規則だし、土日祝日休みで時間がきちんとしている所は給料が安い。
何か条件を譲らないと見つかりっこなさそうだ。