「…やっぱり…ダメ、ですか…」

麻美がうなだれたが、あたしは彼女の背中にそっと手をあててさすった。

「尚美…。日比谷さん、雲居さん…あたし…こんなのもうやってられません!
マネージャーの顔、怖くて見れない…」

麻美が泣きながら訴える。
あたし達はうつむきながらも、どうにか打開策を見出そうと必死だった。

「ねぇ…支社長に直談判してみる…?」

沈黙を破ったのは、やはり眞子だった。

「支社長に…?」

あたしは驚いた。
一介の営業職員が支社のトップと直接話す事など、面接時くらいだからだ。

「そう…。今の支社長は、物静かな人だけど…ちゃんと人となりは見てくれてると思うの。直接あたし達から訴えれば…なんとかしてくれるんじゃないかな…」

「だけど、どうやって会うの?個別になんか会えないんじゃない?」

いつもは冷静な妙子も、この眞子の提案には不安を隠し切れないようだ。

「うん…。やっぱり直接行っていきなり、がいいと思う」

え!?
いきなり?
アポもなしに?

これにはあたしも仰天してしまった。

「今週の金曜日、支社で福利厚生委員会があるの。あたしが委員として出席するんだけど、委員会が終わった後に支社長に予定が入っていようとも、どうにか話だけでも聞いてくれってお願いしてみようと思う」