こうやって地道な作業を繰り返し、何度も見直し相談しながら契約まで持って行く。

しかし絶対に契約してもらえるわけではない。
かなり話を詰めていても、ひょんな事で流れてしまう事もある。
だからあたしは多少時間がかかっても信頼関係を築いた上で、保険を任せてもらえるよう日々努力していた。

簡単に契約をとれる事があっても、そういった契約は一度とってもすぐに解約される確率が高い。
契約後あまりにも早い解約は、あたしたち営業の査定にヒビく。

そうならないよう、誰にでも彼にでも声をかけないようにしているのだ。
そういう地道で誠実な努力の積み重ねが、結果を生み出す。
決して急いではいけない。

待てばカイロのなんとか…、なんだっけ?
柄にもなくことわざなんか使おうとしたからいけなかった…。

とにかく、結果を急いでもどうしようもないという事だ。

だけど、あの女は…
藤堂マネージャーはそれを許さない。
あの女はなんとしても、早い結果を要求している。

そしてそのために、あたし達にとんでもない契約の取り方を強制しているのだ…。