帰りの車の中で、麻美が心配そうにつぶやく。

「でも、尚美…。まわれる所っていっても、限られてるじゃない?」

「うん…。そうだけど、リストにあげた人たちの中に、長い間行ってない人とか、いるでしょ?まずその人たちに、片っ端からアポとるよ」

リストというのは、毎月自分が見込みとした人をあげたもの。
見込みにあげても、必ずしも契約が取れるわけではないけど。
いつもは言われるがままに適当にリストを作っていたけど、こんな時は意外と役に立つ。

あたしと麻美はそれぞれ思い当たる人に電話をかけまくった。

それでも急な事に対応できる人は少ないから、とりあえず連絡をとって、会ってくれそうな人に片っ端からアポを取った。
さすがに急だから、今日会えるのはあたしと麻美お互い一人だけだった。

だけど、その一人が契約の大きなカギを握っている事もある。

あたしはまず、麻美がアポを取った人に一緒に会いに行った。
中学時代の同級生という彼女はとても気さくで話しやすい人で。

現在彼女と家族が加入している保険の話も簡単に聞かせてくれた。
いきなり証券を見せて欲しいとは言いにくかったが、ダメ元で言ってみると、案外アッサリと持ってきてくれた。