あたしは我慢できずに立ち上がった。
藤堂のそばに行こうとするあたしの腕を、隣の席の妙子がとっさに掴む。

「やめときな…。言ったってわかる相手じゃないよ…」

小さい声でそう呟いた妙子をにらみつける。

「じゃあ、雲居さんは、従うんですか?」

「そうじゃない…。怒りにまかせて訴えてもそれが通るわけじゃない。とにかく今は大人しくしてて」

あたし達がゴチャゴチャ話していると、藤堂が怒鳴った。

「何してるの!一分一秒ムダにできないのよ!アンタたちは出かけて契約取ってきてなんぼなの!わかったらこんな所で油売ってないで、早く出かけなさい!」

イライラを抑えられないまま、激しくドアを開けて営業所を出た。
駐車場へ向かっているあたしを麻美が追いかけてきた。

「一緒に行こう。尚美…」

「あたし今日はもう家に帰るよ!」

「え?」

「アンタ、藤堂の言う通りにする?できるの?」

麻美は黙り込んだ。

するとうしろから、眞子が声をかけてきた。

「今からみんなで話さない?うち近いから、おいでよ」

隣で妙子もうなずいている。

あたしと麻美は眞子に従う事にした。