あたしは自分の次である眞子を呼びに営業所に戻った。

自分のデスクに座って神妙な顔をしている眞子に「終わりました。どうぞ…」
と言うと、眞子は肩をビクッと揺らして振り向いた。

少しの間無言でお互いの顔を見つめた後、眞子が言った。

「飯田さん…あたし…、言いなりなるつもり、ないから…」

眞子はあたしにそれだけ言うと営業所を出て行った。

きっと眞子は藤堂に何を言われるのか予想ができていたのだ。

それにしても藤堂はまるで鬼だ。
数字を追う事だけにとらわれすぎて、人としての道を外れようとしている。

全員が再び自分のデスクに戻ると、すぐに藤堂が戻ってきた。

「それじゃあ、さっきお願いしたこと、早速とりかかってね。一人たりとも棄権は許さない。どうしても嫌だって人は、会社辞めていいから。それくらい追い込まれてるってこと、みんな自覚するように」

何よ、それ…。
追い込まれてる事くらいあたしにもわかる。
けどそれは、今までみたいにぶっちぎりでトップを取れないってだけでしょ?
M支社の中でトップの座を維持したいってだけのために…

そんな事のために、あたしたちが犠牲になるなんて…。