敏生はあたしの言葉に答えず、いきなりあたしを抱きしめた。

「ちょ、ちょっと!何よ、いきなり…」

抱きしめる敏生の腕の力が強くなり、あたしは息が苦しくなってきた。
逃れようともがいても一向に緩めてくれる気配がない。
限界を迎えたあたしが声を出そうとした所で、敏生が口を開いた。

「俺の目の届くトコにいて欲しーんだよ…。恥ずかしいから、こんな事言わせんなよ…」

そうか…
コイツは単なるヤキモチ妬きって事ね…。
あたしはわかっていながらも、ちょっと意地悪をしてやりたくなった。

「そうね…。でも、やっぱりおんなじ職場ってのはね。まわりにも気を遣わせちゃうだろうし。アンタもやりにくいわよ?」

あたしがそう言った直後、体を離しわかりやすいくらい不機嫌な顔で怒り始める。

「んだよ!お前は俺と一緒なのがヤだってのか!?あー、そーかよ、そーかよ!だったらいいよ、好きにしろよ!」

ふてくされた敏生はそのままプイッと顔をそらしてしまった。

あたしは微笑みながら敏生の頬を両手でそっと包み込み、自分の方へ向ける。
驚く敏生に言葉を発する隙を与えず、あたしはその唇を優しく塞いだ。