「水谷さんの気持ちが…俺には痛いくらいよくわかってさ…。俺も人生初だし…こんなに一人の女を好きになったの…。けど、なかなかカミングアウトのタイミングが見つけられずに悩んでたから…。水谷さんに相談したってわけ。で、きっとお前に先に言ったら反対するだろうからって、ナイショにしとこうって」

「よかったね、相談できる相手ができて。アンタ、友達いないもんね」

つい口が滑ってしまう。

敏生は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに「悪かったな、友達いなくて」と言って笑った。

「ほんとによかったの？富美子は…？なんか、主役の座を奪ってしまったような気がして…さ」

あたしはむしろ富美子の方が気になって尋ねる。

「なんで？あたしは水谷さんが言った通り、乗り気じゃなかったんだ。だって三回目の結婚だよ？さすがにお祝いするってムードにはね…。そしたら、グループ長が尚美ちゃんとの婚約披露したいけど悩んでるって聞いて。あたしも尚美ちゃんと一緒ならそこまで恥ずかしくないかなって。それでもう、二つ返事でＯＫしたんだよ？」

一点の曇りもない笑顔でそう言ってくれる富美子に、あたしは本当にいい友達がいて幸せだと、心から感じていた。

「ありがとね…。富美子…。これからも…よろしくね…。家族、ぐるみでさ…」