すると眞子が妙子の腕をグイッと引っ張る。

「バカ…!よく見なさいって…!メガネがないけど…伊藤内務次長じゃんか!」

声を押し殺しながら言った眞子に妙子がバカでかい声で言い返す。

「だから~!伊藤内務次長って氷メガネでしょ?わかってるけどアイツなら余計にいるわけないじゃん。富美子となんの関係があるのよ?」

あー…やっちゃった…。

あたしがそう思った瞬間背筋が凍るかと思うくらい冷たい視線を向け、敏生が妙子に言った。

「氷メガネ…とは。私の事でしょうか?I第二営業所特別主任、雲居妙子さん…?」

ヤバい…。
久々に聞いたけど、コイツがこのしゃべりをする時は相当頭にきてる時だ…。

爆発寸前だよーー!

「あっ!あの!ス、スイマセン!!伊藤内務次長…じゃなかった…。えっと…今は…」

焦ってどもりまくる妙子に敏生は涼しい顔のまま答える。

「今は本社の事務企画部企画第一グループ長です。よく覚えておいて下さいね。雲居さん…」

妙子はまるで水戸黄門に出てくる農民みたいに、ハハーっと頭を下げた。

カチコチに緊張して動けずにいる妙子の隣で眞子が静かに質問してきた。

「飯田さん…。あのさ、まさかとは思うんだけど一応確認させてくれる?あなたと伊藤グループ長ってさ…」

眞子がそこまで言った所で敏生がすぐに口を挟んだ。