「終わっている方はどうぞ退出して頂いて結構です」

試験官がそう言ったのと同時に、あたしは席を立って退出した。
とにかく早くタバコが吸いたかった。
完全にニコチン切れだ。

部屋を出て辺りをみまわすが、とても喫煙所があるような雰囲気ではない。
帰りの列車の時間まではまだ随分余裕があると思い、あたしはビルを出た。

とりあえず、『先に駅ビルのカフェに行っとくね』とだけ富美子にメールし、あたしは駅ビルに急いだ。

カフェに入って注文してから喫煙席に座り、タバコをふかす。
あ~、ほんと落ち着く…。

あ、ヤバ…。
なんか頭がクラクラする…。
ニコチン切れすぎだわ…。

ホッと一息ついて、なんとなく店内を見回す。
奥の方にも席があるのか。
その時、あたしの目に入ったのは…

え?  嘘!
なんで?

奥にある、外からも中からも一番見えにくい席に座っていたのは…
…あたしの大嫌いな氷メガネだった…。

幸いあたしにはまだ気づいてないみたい。
でも…なんかいつもと雰囲気が違うんだけど…
あたしはそう思って、ナプキンを取りに行くふりをして近づいてみた。

なんと…
アイツが笑ってる…。
信じられない…。
笑った顔なんて、初めて見た…。

でもなんであんなに幸せそうに笑ってんだろ…?

不思議に思っていると、アイツのテーブルの上に、あるものを見つけた。