あたしに気づいた人たちが笑顔で近づいてきた時、隣にいる敏生がいきなりあたしの腰を引き寄せた。

こっちに向かって来た人たちの足が止まり…
あたしの腰を抱いて隣にいる人をジッと見つめる。
少しのどよめきののちシンと不自然なほど静まりかえった。

なぜかピンと空気までが張りつめている。

そんな中一番最初に口を開いたのは祐実だった。。

「え？え？伊藤…内務次長…？じゃないです…よ、ね…？」

祐実も視力が弱いからどんどん近づいて来る。
祐実の隣で大きなお腹を隠すようなゆったりタイプのワンピースを着ている奈津子も近づいてきた。

「祐実さん！伊藤内務次長なわけないじゃないですか！こんなにイケメンじゃないし！しかもあのメガネがない…え…って…、メガネがない…けど…、な、内務…次長ーー！？」

そして二人の隣で何が起きているかわかっていない様子の恭子…。

必死になって二人に、「何？何？なんの話？」って聞いてるし…。

そんな同期の騒ぎを聞きつけたのか眞子と妙子までもが近づいてきた。

妙子がいつもの機関銃のような口調でしゃべりながら奈津子の背中を叩く。

「アンタね、こんなところに伊藤内務次長がいるわけないでしょ？あの人は今本社だよ！？」