「尚美?お前が嫌なら…俺一人で行くから…。お前は待っててくれてもいいぞ?車の中で、悪いけど…」

あたしがずっと黙り続けているから氷メガネはそう提案してきた。

「と、とりあえず…戻るわ…。一緒に…」

あたしの答えに氷メガネの顔がパッと明るくなった。

アンタってほんとに…
そうやって素直な時は子供みたいでかわいーのにね…。

あたし達は氷メガネの車に再び乗ってホテルへと戻った。
車から降りる時あたしはどうするかと氷メガネに聞かれる。

「あたし?…ああ…。あたし…も、行って、も…いいけど?」

一瞬驚きの表情を見せた氷メガネは、すぐに口元を緩めて微笑んだ。

部屋に入ると氷メガネはあたしのキャリーケースを取り、そのまま部屋を出ようとした。

「ちょっとっ!」

あたしは思わず…
呼び止めてしまっていた…。

あたしの急な声に氷メガネが振り返る。

「だから…その…。泊まらなくても…お金とられるんでしょ?だったら…あの…。泊まっても…いーんじゃない…?」

あたしは自分の言ってる事が二転三転してることを重々承知しながらそう言った。

氷メガネは何も言わずそのままスタスタとあたしの方へ戻って来て、あたしを正面からすっぽりと包み込んだ。