氷メガネはあたしの腕をつかんだままで大人しくついてくる。
ついて来られてもあたし自身がどこへ行けばいいのかわかんない。

このまま当てもなく歩いてみようか…。
そう思っていた時、氷メガネが消え入りそうな声で呟く。

「ごめん…。お前の気持ち…考えてやらなくて…」

やっぱり…わかってるんじゃない…。
だけどわかってるならなんであんなに強引な事?
たいていの女はああいう事されて喜ぶかもしれないけど、残念ながらあたしはたいていの女の部類には属さないみたい。

でも、いつもいつもあたしの気持ちを読むわりになんで今回は読んでくれなかったんだろ…。

「尚美…。お前がどうしても嫌なら…、ホテルも指輪もキャンセルする…。だから…許してくれない、か…?」

ホテルも…指輪も…
ほんとはイヤってわけじゃない…。

確かに分不相応だとは、思う。
あたしは贅沢をしたいなんて思ってない。

ただ、氷メガネと一緒にいられれば…
どんなトコだっていい。
プレゼントなんて、なくたって…
会えるだけでいい。

そんなあたしの気持ちを…わかってくれてない事が
イヤなんだ…。

なんの返事もしないでいるあたしにどうしていいかわからなくなったのか、氷メガネはいきなりその場で土下座をした。