大きな通りまで出て行き交う車を眺める。

タクシーをとめようにも車の数が多く、スピードも出ていてうまくとめられない。
いっその事どこかの駅に行けばそこからタクシーもつかまるかもしれない。

そう思ったあたしはキョロキョロと辺りを見渡してみた。

さすがに今の位置からは確認できず、仕方なくあたしは誰かその辺を歩いている人に尋ねる。

「あの…すみません。ここから一番近い駅って…」

あたしがそこまで言いかけた所で後ろから腕をつかまれた。

「何やってんだよ、まったく…」

それは呆れ顔の氷メガネ…。
あたしをつけてきたのは明白なわけで。

「離して…」

あたしは怒る気も失せ静かにお願いした。

「ヤだね。離したらどっか行くつもりだろ」

「あたしが…、なんでどっか行くのか、その理由…わかんないの…?」

あくまでも冷静に、感情を荒立てないようにしながらあたしは氷メガネに尋ねてみた。

「…………」

ダンマリ、か…。
ほんとにわかんないのか、それともわかってて黙ってるのか…。
いつもの氷メガネなら、間違いなく後者のほう…。

ここで怒鳴った所でどうなるわけでもないと思ったあたしは、掴まれた腕はそのままに歩き出した。