「あのさ…。ここってスィートルームってトコ?」

あたしが遠慮がちに聞くと氷メガネはいとも簡単に「そーだけど」と言った。

そーだけどって、アンタ…。
一泊いくらするのよ…。

まして年末年始は通常より高くなかったっけ?
あたしには贅沢すぎる部屋に気後れしてしまう…。
いくらなんでも甘やかしすぎじゃない?

あたしは氷メガネに言った。

「でも、これはやりすぎだってば…」

ソファに座っていた氷メガネは、あたしのその言葉を不思議そうに聞いている。

そして一言、「なんで?」と聞いてきた。

「なんでって…。あたしはさ、こんな贅沢慣れてないから、なんとなく落ち着かないの…。フツーの家に生まれてフツーの生活しかしてないあたしは…アンタとは住む世界が違うんだって…」

氷メガネは一度脱いだスーツの上着をもう一度着なおして、いきなり立ち上がった。

そして「行くぞ」と言って、ホテルの部屋を出る。

あたしは慌てて追いかけた。

「ちょっと…待ってよ!どこ行くの?」

「買い物」

一言そうあたしに告げ、氷メガネはスタスタと歩いて行く。
あたしは必死について行った。