「篠宮さん!その節はお世話になりました…」

氷メガネがそう言って頭を下げると、篠宮さんも慌てて頭を下げた。

「すいません…いつもはメートルがやるんですけど…。伊藤さんが来ておられるって聞いて…。今日は…私がご説明させて頂きます…」

相変わらず人見知りなのか、オドオドした感じだけど…
でも前に会った時よりは笑顔が多くなったような気がする。

まず最初にワゴンの上のデザートの説明。
あの…きっと全部だから説明いらないと思いますけど…

あたしはそう思いながら聞いていた。

そしてお約束通りの「全部お願いします」は、氷メガネと富美子の声が重なり、水谷さんはまた笑い出した。

結局デザート全部と、そのあとにクレープシュゼットを頼んだのは氷メガネと富美子。
あたしと水谷さんは、コーヒーだけ。

なんかほんとにおもしろいわね、この面子は。

いつも通りとろけそうな顔をして食べる氷メガネに、今日は富美子まで加わっている…。

あたしは幸せそうに食べる二人を半分呆れ顔で見ていたが、やっぱり水谷さんは再びツボに入ってしまったようで…。

さっきから声を殺してずっと笑っている。

富美子も慣れているせいで、全く意に介していない様子だ。

あたしはどうしていいかわからずに、水谷さんに言った。

「あの…よかったら、喫煙ルームに行きません?」