コホコホと咳を繰り返しながら、ようやく落ち着いた富美子が言った。

「グループ長に食べさせたいとか?」

よく…おわかりで…。
あたしが甘いモノ苦手って知ってるから、わかるんだよね。

「うん…。こないだ教えてもらったフレンチのお店もね、アイツすごい喜んでさ。デザートは全部とか言っちゃって。で、そのデザート全部食べ終わったあとに、まだクレープ食べるんだからね!恐れ入ったよ」

あたしがあの時の氷メガネの事を話すと、富美子は不思議そうにしている。

「なんで?普通だよ、それ」

いやいや、フツーじゃないから!
だってデザートだけでフルコース分のカロリー摂取してるよ?
もしかしたらそれ以上かもしれないし!

「あたしもいつも全部って注文しちゃうから…。わかるなぁ、グループ長の気持ち。
あ、なんか話聞いてたら食べたくなってきちゃった。クレープってクレープシュゼットでしょ?あたしもあれ、食べてみたかったんだよねー」

ヤバい…。
富美子は氷メガネと同じ人種だった事、忘れてた…。

うわー、食べてるトコ想像してんのかわかんないけど、世界に入りだしたわ。

「ちょっと、富美子!肝心なのはそれじゃなくて!」

あたしが声を大きくしたので、富美子がハッと我に返った。

「ああ、ごめん、ごめん!食べたくて妄想してた!」

まったくアンタといい、氷メガネといい…。
甘党のヤツはよくわかんないよ…。