「じゃあ、ちょっとだけ…。実は、塚本さんの事なんですけど。彼女、今日、氷メガネにたてついたんです…」

『えっ!ほんとに!?どんな風に?』

眞子はあたしが電話をかけてくるのは余程の事とわかっているのだろう。
真剣な反応がその事を裏付けている。

「塚本さん、あたしの事をかばって…。文句言っちゃったんです…。そしたらアイツが、氷メガネがすごい顔して…。で、その後の質疑応答も、あたしと塚本さんを集中攻撃だったんです」

そこまで言うと、眞子は少し笑いながら言った。

『でも、富美子は全部答えられたんじゃない?』

「え?…はい…実は、そうですけど…」

あたしはどうして眞子がその事を知っているのか、不思議に思った。

『あの子ね、鈍くさいけど、頭いいのよ。入社前のテストも満点だったしね。
多分今度の資格試験も、会社の基準の九十五点は軽くクリアできるんじゃないかな』

正直、驚いた。
悪いけど、富美子はそんなに頭よさそうに見えなかったから…。

「そう、なんですか」

『ただね、いくら頭がいいからってそれだけじゃダメじゃない?確かに営業だから、直接内務次長が評価を下したりはできないけど…。だからってあんまり心証を悪くするのも考えものよね。支社長に一番近い所にいる人だから、発言力あるもんね…』

あたしが辞めた時、氷メガネが少なからず絡んでいた事を眞子は気づいているのかもしれなかった。

「そうなんですよ…。今回の事も、自分は何も言われてないのに、あたしの事をかばって、たてついたんで…」