「出産も随分と昔の事で…。それに子育てっていっても、子供の方がしっかりしてて…。お役に立てるかわかりませんけど…」

あたしが照れながらそう言うと、隣で氷メガネが余計な事を言い出す。

「まー、どう考えても晴彦はお前よりしっかりしてんな。どっちが親か子か、わかんねー時あるもんな」

もう…
今せっかく美緒さんといい感じだったのに!
コイツはあたしの株を下げる気か!

「まあ、ほんとにあたしで…よければいつでも言って下さいね」

氷メガネにけなされた後じゃ説得力がないから、あたしはこれくらいしか言えなかった。
でもそんなあたしに早速美緒さんは話を始めた。

フランスで結婚生活をスタートさせて新婚時代を幸せに過ごしていた事。
悠生さんの仕事も軌道に乗り始め、子供が欲しくなった事。
でもなかなか恵まれずに悩んだ末、日本で不妊治療をしようと決意した事。

そして…

願いが叶いようやく授かったものの、普通の妊娠とは違って不安定なため、常に安静にしていなければいけないとの事だった。

あたしは昼間、悠生さんが仕事でいない時の美緒さんを思うと心配でたまらなくなった。