「やっぱり…許してもらおうなんて…虫がよすぎるわね…。許してもらえなくてもいいの。ただ…謝りたかっただけだから…」

貴和子さんは涙を流しながらも凛とした笑顔でそう言った。
あたしもこれにはどう言いようもなく、ただ黙る。
氷メガネも同じく黙ったままで。
誰もがこの状況は仕方ないと思っていた。
でもお兄さんは、そんなあたし達の気持ちを察したのか、ゆっくりと話し始めた。

「コイツが…敏生がアンタを受け入れて…。
それで尚美さんがアンタのためにこうやって動いているって事が…全ての答えだな…」

え?
どういう、事…?

「もう…いいよ…。わかった、から…」

「悠生…」

貴和子さんは涙を溢れさせて…
あとはもう、言葉が出ないようだった。

そこであたしはKYだとわかっていながらお兄さんに聞いてみた。

「あのっ!奥様は…美緒さんは、お元気なんですか…?」

お兄さんは一瞬ギョッとしたようだったが、すぐに優しい笑顔であたしに向かってうなずいてくれた。

「元気に…してるよ…」

「無理を承知で言いますけど…会わせてもらえたり、しませんよね…?」

氷メガネと貴和子さんが息をのむのがわかったが、あたしは元来まどろっこしい事が嫌いな性格。
モタモタするのは好きじゃない。