「何…水くさいこと言ってんのよ…。アンタが苦しんでるのに…あたしがほっとけるわけないじゃない…。アンタが苦しい時はあたしも一緒に苦しみたいの!助けてあげられるなら、助けてあげたいのよ!」

あたしはそう言って泣きながら氷メガネに抱き着いた。
氷メガネはあたしを優しく抱きしめながら、頭をヨシヨシと撫でる。

お兄さんはそんなあたし達の姿を見て言った。

「なぁ…敏生…。お前いつからそんな人前でいちゃつくようなヤツになったんだ?昔のお前はそういうの、一番ムカついてたじゃねーかよ」

驚いてお兄さんを見ると、さっきまでの険しい顔は消え、とても穏やかな表情でこっちを見ていた。

「兄貴…」

「敏生…。今回だけは…カノジョに免じて話だけは聞いてやるよ。その人の、話もな…」

お兄さんはそう言って貴和子さんを見た。
貴和子さんはウッとなって口に手を当てて泣き崩れた。

とりあえず全員でいったん氷メガネの車に戻り、話を続ける。
そして氷メガネは美緒さんの事を香菜さんのお母さんに話してしまった経緯を説明し、誠心誠意謝った。

あたしは隣で氷メガネのお腹を肘でつつく。

「ん?なんだ?」

問いかけるような目をした氷メガネに言った。

「ちゃんと、全部。全部正直に話す!」