「ただ…美緒さんの事、詳しく言った訳じゃなくて…。お兄さんに好きな人がいるみたいって言っただけだそうです。ただ、香菜さんのお母さんがそれをどのようにお父さんに伝えたのかは、わからないんですけど…」

「香菜ちゃんの母親。多分あたしを敵視してたから、変な風に主人の耳に吹き込んだ可能性あるわね」

え?
そうなの?
そんな話は初耳だけど…。

「あの人ね、あたしがなんの後ろ盾もない普通の家の人間だったのが気に入らなかったみたい。陰で噂を流されたの。主人を体で落としたとか、他にも色々とね…」

よくある若くて美しい女性に対するやっかみってヤツ?

醜いねー。
そういう事すればするほど、もっと自分が醜くなるってわかんないのかね?

「でも悠生は、あたしの事も恨んでるだろうから…。会えないでしょうね…」

そーなのよね…。
氷メガネ以上に貴和子さんの事はもっと憎んでるはず。

でも…
母親としてそのままでいいわけないでしょ?

「貴和子さん…。差し出がましい事だとは思うんですけど…。やっぱりダメ元で会いに行ってみませんか?悠生さんに」

あたしはほんとに嫁の立場じゃ相当言いにくい事を進言した。

でも、貴和子さんはそんなあたしに言った。

「そう…言うだろうと思った」

見ると満面の笑顔であたしを見ている貴和子さんと目が合う。