「僕は会う気は…ありません…」

えっ?なんで?
どうして?
だって、たった一人の血を分けた弟でしょ?

「なぜですか?たった一人の弟なんじゃないんですか?小さい頃から助け合ってきた、その弟に…会いたくないんですか?」

あたしの言葉にお兄さんが驚きの表情を見せた。
おそらくは、あたしが自分たちの幼少期を知っている事に驚いたんだろう。

そしてそのイケメンを絵に描いたようなさわやかさとはまるで正反対の苦渋の表情を見せて、お兄さんは言った。

「その…たった一人の…血を分けた弟に…裏切られた俺の気持ちが…。あなたにわかりますか…?」

どういう事…?
…裏切ったって?
氷メガネが一体、あなたに何をしたの?

「どういう事でしょうか?裏切ったって。
そんなはずありません!何かの間違いじゃないんですか?」

あたしは縋りつくようにお兄さんに質問した。

「飯田さん…とおっしゃいましたね。敏生に伝えてくれませんか。俺は、お前も親父もおふくろも一生許す気はないって。縁を切った以上、今後も一切会う気はないって」

そんな…
そんな事、アイツに言えるわけがない…。