お兄さんの両の眼が大きく見開かれた。

「敏生…の?婚約者…?」

お兄さんはそう言ったきり言葉を発する事なく。

え?そんなに意外だった?
やっぱりあたしと氷メガネじゃ釣り合わない?
そりゃそーだろーけど…。
お兄さんにそう思われちゃうと、やっぱヘコむわね…。

けど、今はそんな事でイチイチ落ち込んではいられないから。
あたしは拒否されるのを覚悟でお願いしようと口を開いた。

「あ、あの…」

「ちょっと、外へ出て話しましょうか」

お兄さんは言いかけたあたしを遮り、店の人に声をかけて店の外へ出た。
通路を通って裏口へ行くと中庭になっていて、休憩用のモノなのか、何脚かある椅子のひとつへあたしを座らせた。

「何かお話があるんでしょうか?」

「はい…。実は今日、敏生さんも一緒に来たんです。さっき、お兄さんに声を掛けたけど…気づかれませんでしたか?」

お兄さんはその涼しげな目元を少し曇らせた。

「あれは…あの声はやっぱり…敏生だったのか…」

「そうですよ!お兄さんの事、ずっと探してたんです!それでようやくここにいるかもしれないってわかって、会いに来たんです!
お願いです、少しでいいので、会ってやってくれませんか?」

あたしは必死に頼み込む。
でもお兄さんの口から出た言葉は、あたしが期待するものではなかった。