だけどあたしはそれを責める気にはなれない。
十年以上も会っていない悲しい別れ方をした兄。

そしてその後もまったく連絡をくれなかった
お兄さんの気持ちは…

親はともかくとしても弟の氷メガネの事はどう思ってたのか。
無力な若いコイツが親を押しのけてお兄さんを庇えなくても…
それは仕方のない事だと思う。

お兄さんの気持ちを考えれば考えるほど、わからない事だらけだった。


少し先に見える店先で何やら行列ができている。

もしかするとあそこが?
あたしは運転している氷メガネの方に振り向いた。

車を道路の端に邪魔にならないように寄せて、そのまま黙り込む。

ここなんだ…。
それにしてもすごい行列…。
しかも全員女性ばっかじゃん。
これはすごいわ。

「ねえ、車とめてても大丈夫なら降りよっか」

あたしがそう提案すると、青ざめた表情で氷メガネもなんとか頷いた。
他にも路駐している車があるから多分大丈夫だろう。
あたしはそう思って、足取りの重たい氷メガネの腕を優しく引きながら、行列の最後尾に並んだ。

するとあたし達の前に並んでいた女の子二人組がチラッと氷メガネを見た。