「…飯田さん。随分といい度胸ですね…。私の講義中に居眠りとは…。いつからそんなに偉くなったんですか？」

同期のみんなが驚きの表情で見守る中、氷メガネは続けた。

「あなたは、私の講義など聞かなくても試験に受かるという事ですね。すごい自信だ。みなさんも、飯田さんを見習って下さいね。寝てても受かるらしいですから」

あたしは今にもブチ切れそうになるのを必死にこらえていた。

すると、

「ちょっと言いすぎじゃないですか…」

という声が聞こえた。

驚いて顔を上げると、富美子が氷メガネをにらみつけている。
あたしは慌てた。

「塚本さん、いいのよ。悪いのはあたしなんだし、内務次長が言う事はもっともなんだから」

「それにしたって、言い方があるんじゃないですか？伊藤内務次長の言い方は、注意じゃなくて、嫌がらせみたいに聞こえます！」

氷メガネを怒らせるとヤバい事を知っているあたしは必死に目配せするが、富美子は興奮しているのか、まったく気づかない。

「あなたは…確か…、第二の塚本さん、でしたね…。覚えておきましょう…」

やっちゃったよ…。
いくら何も知らないとはいえ、富美子の発言は完全にアイツを怒らせたはずだ。

これはマズイ。