そーなのか…
二十三区って言われても、あたしはよくわかんないけど。

「でも、どうやってわかったの?鈴木さんが教えてくれたの?」

『いや…教えてくれたのは鈴木さんじゃない。鈴木さんは調べたけどわからなかったって言ったんだ。教えてくれたのは…篠宮さんの方だ…』

え…
篠宮って、あのイケメンパティシエの篠宮さん?

氷メガネは続けた。

『篠宮さんの知り合いのパティシエの人が、兄貴の話を聞いて思い出したみたいでな。その人も兄貴と直接の知り合いではないから、又聞きらしいんだが…。どうも、奥さんの事で帰国するという話だったみたいなんだ』

奥さんって…
美緒さん、だよね…。

「奥さんの事って?」

『俺にもそれ以上はわからない。篠宮さんもその理由までは知らないと知り合いに言われたそうだから。ただ、知り合いの人がさらに調べてくれて…。どうも兄貴は料理の方ではなくて、パティシエになっているらしい』

へっ?
お兄さんが、パティシエに!?

『兄貴はどうも二十三区内のどこかのパティスリーで働いているらしい。俺が片っ端から探してるが…今のところ見つかってないんだ…。ただ…ちょっと最近話題になってる店があってな。調べたら、フランス仕込みの若いパティシエがいるって噂がある。しかも。口コミ情報によると、そのパティシエがイケメンだと書いてあった』