写真?

ああ…そういえば壁にさり気なく飾ってある写真が…
確かにこれは、シェフの若い頃…みたいね。
周りにいる人は、ほとんどが外人だし…。
あっ、これって篠宮さんかな…?

あたしが写真に見入っているとシェフが氷メガネに返事をする。

「はい。確かに私とパティシエの篠宮はフランスの同じ店で修業していました。でも、それが何か?」

シェフが疑問に思うのと同様、あたしもどうして氷メガネがそんな質問をしたのか真意を測り兼ねていた。

すると氷メガネは小さい声でつぶやくように言った。

「私の…兄が…フランスで料理の修業をしているはずなんです…。フランスといっても広いし…同じように日本からたくさん来ているでしょうからご存じないかもしれませんが…。どなたか、兄をご存じの方がいないか、と…思いまして…。すみません、いきなり…」

そっか…
お兄さんを探してるから
ちょっとでも可能性があるなら聞いてみるよね…。

やっぱりアンタなんだかんだ言ってそんなにお兄さんの事を…
当たり前よね…。
この世にたった一人しかいない血を分けたお兄さんなんだから。

あたしは一人っ子だったから、よくわからないけど…。
小さい頃に一緒に辛い思いを乗り越えて来たんだったら、なおさら心配するわよね。