隣でシェフの鈴木さんも笑いをこらえている様子に見えるんだけど…。

「ねぇ、もうそのくらいでいいんじゃない？」

あたしが横から注意めいた事を言うと氷メガネは、「なんで？まだ半分も話してないのに？」と相変わらずのＫＹぶりを発揮する。

あたしはさっきよりも小さい声で言った。

「お仕事の邪魔しちゃ、悪いでしょ！」

さすがにこれで氷メガネも納得したらしく、嫌々ながらも話を終わらせた。

ここまでコイツが褒めちぎる店は初めてで、さすが富美子のおススメだけの事はあるとあたしも鼻が高かった。

そして去って行こうとするシェフをいきなり氷メガネが呼び止めた。

「あの…シェフ、ちょっと！」

「こらっ！アンタもういい加減に…」

氷メガネを止めようとしたあたしは、さっきまでの緩い表情とはうってかわって真剣な表情になっている事に気づき、言葉をとめる。

「あの…いきなりぶしつけな事を伺いますが…、シェフはフランスで修業をされたんですか？」

ほんと、いきなりすぎ…。
どーしちゃったの、一体？

「え？どうして、そんな事を？」

そーよね…。
突然何？って感じよね。

「いえ…あの…。飾ってある写真が…日本で撮影されたものじゃないのがあるような気がして…」