しばらく目を閉じていた氷メガネが突然店員を呼ぶ。

そしてやってきた店員に、「申し訳ありませんがシェフを呼んで頂けますか？」と言った。

あたしはなんでシェフを呼ぶのか全くわからなかったが、店員はニッコリ微笑んで「少々お待ち下さい」と言って厨房の方へ消えて行く。

「どうしたの？なんでシェフを呼んだの？」

あたしが尋ねると、氷メガネはニヤッと笑うだけで教えてくれない。

まさか…
あたしはおいしいと思ったけど、コイツにとっては何かいけないトコがあったとか！？

でも今までいくらマズイ店でも店内で騒いだり、ましてや店員さんを呼びつけるなんてこと、しなかったじゃない！

アタフタと焦るあたしの横を通り過ぎる男性。

あ！
ヤバい、来ちゃった！

「お待たせ致しました。シェフの鈴木(すずき)です」

そう言って爽やかな笑顔を見せる男性は、なんと…
まだ若いし、かなりのイケメンではないか！！
この人がシェフなんだ…。

あたしが心配しているような文句どころか、氷メガネは料理の事を手放しに誉めちぎっていてあたしは胸をなで下ろした。

シェフは絶賛する氷メガネに、はにかみながら何度もお礼を言っていた。