「ねえ…、そんなにおいしいの…?」

「…………」

シーン…

コイツ全然、聞いてないよ!

マジでそこまで…
そこまで旨いの?

あたしは聞くのをやめた。
氷メガネの表情だけで、聞く必要なしと判断できた。
まあ、こんなに幸せそうな氷メガネの顔を堪能するのもたまにはいいわね。
ここまで悦に入った顔は滅多に見られないし。

氷メガネの顔を見ながらあたしも自然と笑顔になっていた。

そしてラストのコーヒーまでようやくたどり着き、あたしも何故だか一安心する。

氷メガネは舌が肥えてるから、当然味にはかなりうるさくて。
もちろん、お店なんだし、プロの料理人だからきちんとしたモノを出さなきゃいけないのはわかるけどね。

だけど店の中にはイマイチなモノを出すとこもあるんだよね。
そういう時は不機嫌になっちゃうから、しばらくほっとく。

だけどコイツがすごいのは、決して店の中ではマズイとか言わずに残さず全部食べるのよね。
それで店を出てからイマイチだった理由を並べ立てて、リピはしないっていう徹底ぶり。

でもそんなコイツが、この店に関しては多分相当気に入ってるような気がする。