氷メガネの憎い男

白ワインとロゼってのはあたしでも知ってるよ。

だけど…
赤のフルボディというのは…?
赤…ワインって事、でしょーか…?
あのー…よくわかってないのですが…。

挙動不審なあたしを見た氷メガネは一言。

「ま、いい。今度用意しとく。楽しみにしとけ」

呆れましたね?
今?

あー…
こんな時、富美子みたいに知識持ってたらなーっていつも思うんだよね。

そして氷メガネにとってはお待ちかねのデザートタイム。
よかったねー!

見ると、何やらワゴン車を押してさっきの店員がやってきた。

なんだ?
今から何が始まるのじゃ?

「ワゴンサービスか…。粋だな」

粋、なのね…?

ひとつずつデザートの説明をする店員に感心する。
よくこんなにたくさんの種類を覚えられるよね!?

そして店員が説明の最後に言った言葉に、あたしは耳を疑った。

「お好きなものを、お好きなだけどうぞ」

はいぃ?
好きなだけって、全部とか言われたらどーすんのさ?
まさかそんなヤツはいないだろうけど。

「じゃあ、全部お願いします。あ、あと、別にクレープシュゼットも」

えー…
いたよいたよ、ここに!
全部とか、言っちゃう人が!

その上…別に…クレープシュゼ…なんとか?
クレープってあの、原宿で若い子が歩きながら食べてるヤツだよね?
あれがこんな高級レストランで食べられるんだ!
意外だわ…。
でもまさかここで紙にクルリと巻かれた状態のクレープが来るわけないから…
皿に載せてあるって事よね?