あたしは少しだけショックを感じながらも気を取り直して氷メガネに言った。

「そうなの。富美子は自分も料理上手だしね。こだわりの人だから。あっ!そういえば彼女ね、アンタに負けないほどの甘党なのよ。絶対話合うって!」

「ふーん。そりゃ、一回話したいもんだな」

「もしかして…あの日以来しゃべってないよね?富美子と」

「あの日って?」

アンタ、まさか忘れたの?
…よもや忘れたとは言わせないわよ…。
富美子を使って、あたしをハメよーとしたくせに…。
ハメるっていうか…
ヘタレなアンタが他力本願で事を成そうとしたってだけだけど?

でも、結果的にはそれがよかったんだよね。

「ほら!富美子があたしの事で話したい事があるって、アンタに会いに行った時の事よ。あたしの話をなんで富美子がするんだってアンタが言った、あの時」

「あー、あれか…。すっかり忘れてたけど、そんな事あったな…。そっか…。あれ以来って事は相当時が経っちまったな」

「うん…。でもね、富美子も今すっごく幸せになってて…。あの時はあたしより深刻だったんだよね。それなのにあたしの事心配してくれて…。ほんとにいい子なの、富美子って」


しゃべっていると、隣から視線を感じる。
チラ見すると氷メガネが優しい瞳であたしを見ている。