滅多に見せない貴重な氷メガネの涙を見たあたしは、高鳴る鼓動を止める術を知らなかった。
会社では冷たい人間と思われているんだろうけど…
ほんとのコイツはめちゃくちゃ情に厚くて涙もろいって事
あたしは知ってる…。

そして晴彦も…
多くを語らず、感情をなかなか表に出さない子で。
中には何考えてんのかわかんないって離れて行く友達も、今までたくさん見てきた。

でも晴彦も、不器用だけど本当は誰よりも優しい。
どっか似てんのかもね、この二人は…。

血の繋がりだけが人と人の繋がりじゃない。

血が繋がっていなくても…
心が繋がっていれば
充分親子になれるんだ…。

氷メガネと晴彦と…
そしてあたし。

なんだか歪な三角形だけど…
時を重ねていくうちに、キレイな正三角形になれそうな気がする。

ううん…
別にキレイな正三角形になんかなれなくてもいい。
お互いに強い絆で結ばれていれば…
気持ちが離れる事はない…。

けど間違いなく晴彦の心をほぐして解き放ってくれたのは、
コイツ…。

ほんとにあたし以上に、親としての素質あんじゃないのよ…。

あったかい空気があたし達三人を包む中、あたしは意地を張らずに氷メガネの好意に甘える事に決めた。